研究課題/領域番号 |
20H02225
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
村上 祐貴 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (70509166)
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研究分担者 |
井林 康 長岡工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (10321415)
池田 富士雄 長岡工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (30353337)
土田 泰子 長岡工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (30455125)
外山 茂浩 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (60342507)
上村 健二 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (80708090)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 構造物点検 / 技能の可視化 / 技能の標準化 / 技能継承 |
研究実績の概要 |
構造物の点検技能の継承は極めて重要であるが、属人化された暗黙知である点検技能の継承について体系的に取り組まれた研究事例は極めて少ない。本研究では構造物の定期点検の熟達者を発掘し【課題1】、①構造物の損傷状態の把握、②状態把握の情報に基づく対策区分判定における熟達者の暗黙知を、視線情報を利用して形式知へ変換し、自己組織化マップ(SOM)を用いて知の標準化を図る【課題2、3】。そして、仮想現実(VR)を用いて標準知を加速度的に継承する方法を確立する【課題4】。これら4課題を解決し、未踏領域である熟達点検者(伝承者)から非熟達点検者(継承者)へのシームレスかつ迅速な構造物の点検技能継承を実現する。 令和2年度では、主に実務点検者の損傷状態把握時と対策区分判定時の視線情報を集積し、点検者の判断に及ぼす影響について検討した。その結果、以下の知見が得られた。 【状態把握について】 1)経験年数、点検に関する初めての教育内容によらず、コンクリート構造物の点検業務の経験がある被験者は、コンクリートに生じている変状を損傷として認識していることが、損傷を観察する視線から確認された。2)損傷種類の把握において、企業毎に特徴が見られ、 これは、各企業が社内教育として適用しているOJT方式では、指導する者が受けた教育や経験が影響し、教育の効果に差が生じていることが示唆された。 【対策区分判定について】 1)同一の資料を基に健全度評価を行った結果、点検者間で評価結果に差異が生じることが明らかとなった。2)判定結果が異なった部材においては、損傷写真の注視時間は点検者間で明確な差異は認められなかったが、注視箇所は異なり、被験者ごとに重要だと判断した情報が異なっていたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、【課題1】熟達点検者の発掘(点検者の損傷状態把握、対策区分判定精度の測定)および【課題2】視線情報に基づく点検者の①損傷状態把握、②対策区分判定技能の形式知化を進める計画であり、損傷状態把握および対策区分判定のいずれの区分においても視線情報を取得する計測方法を概ね確立し、目視点検者の技能向上に資する有益な知見を得ることが出来た。状態把握については点検者が歩行した場合の視線情報の測定誤差が課題として残された。原因は被験者の位置同定に採用したGPSの測位精度に問題があることが分かり、現在改良を進めている。 これまで全く明らかとなってこなかった実務点検者の状態把握および対策区分判定時における視線情報や視線情報が点検結果に及ぼす影響もある程度可視化された。加えて、本年度の成果をまとめ、1編の査読付き学術論文を投稿し、掲載が確定していることから、研究の達成度はおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は【課題1】熟達点検者の発掘(点検者の損傷状態把握、対策区分判定精度の測定)、【課題2】視線情報に基づく点検者の①損傷状態把握、②対策区分判定技能の形式知 化、【課題3】SOMによる熟達点検者の①損傷状態把握、②対策区分判定時の形式知の標準化について検討を進める。 【課題1】、【課題2】については昨年度までに測定方法は概ね確立したので、被験者の数を増やして測定を加速させ、【課題3】の実施に必要となる視線の滞留時間、滞留回数、AOI(特定領域数)、瞳孔の大きさ等の視線情報等を集積し、測定領域毎に整理して視線情報の属性の集合(プロファイル)を作成する。状態把握および対策区分判定時のプロファイルを入力データとして、SOMでクラスタリングを行う。その際、【課題1】で発掘した損傷状態把握や対策区分判定の精度が高い熟達者が同じクラスタ内に分類されるように、プロファイルを構成する属性の選択や重みを調整する。SOMは入力する属性の選択や属性の重みを調整することでクラスタマップが変化する性質を有する。その性質を利用した解析によって、抽出された熟達者のプロファイルの属性を普遍的な形式知として言語化し、標準化を図る。
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