研究課題/領域番号 |
20H02228
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
榎田 竜太 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (20788624)
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研究分担者 |
梶原 浩一 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震減災実験研究部門, 主幹研究員 (10450256)
五十子 幸樹 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20521983)
池永 昌容 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (50552402)
郭 佳 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (50868081)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 直置き型構造物 / スティックスリップ現象 / 非線形制御 / NSBC / 上部構造物の応答 |
研究実績の概要 |
本年度では,すべりによる免震効果を発揮する直置き型構造物に対して,その上部構造物を弾性体として模擬した試験体によって振動台実験を実施した.この振動台の制御に,非線形制御手法のNSBCを応用することで,その制御性能の向上を試み,既存の制御手法との制御精度の差を明確にした.
すべる物体がある程度の柔性を持つと,不安定滑りのスティックスリップ現象が生じる.直置き型構造物の上部構造物は弾性体であるため,実際に滑った際には,スティックスリップ現象が生じる.そのため,数値解析においてスティックスリップ現象を表現できるKarnoppモデルを数値解析モデルに組み込んだ.これによって,スティックスリップ現象が伴う直置き型構造物を数値解析的に模擬し,振動台制御へ及ぼす影響を数値解析的に評価できるようにした.また,初年度に構築した安定性解析手法に対して,上部構造物の影響や非線形性も考慮できるように拡張し,上部構造物を弾性体とした直置き型構造物を積載した振動台の安定性解析を行えるようにした.
実際の振動台実験に非線形制御手法のNSBCと既存の制御手法(逆伝達関数法)の両手法を用いることで,それぞれの制御性能を実験的に検証した.この実験では,鋼製フレーム上に鋼製の弾性体を付加した試験体によって直置き型構造物を模擬した.これによって,試験体の質量は振動台の2倍以上になり,振動台制御は試験体の影響をこれまで以上に受けやすくなった.この試験体のすべり面に,十分な黒鉛を塗布することで,その摩擦係数を0.2程度にした.この試験体を用いた振動台実験において,逆伝達関数法では,試験体のすべりとスティックスリップ現象によって,振動台上の加速度の制御精度が極端に低くなった. NSBCを用いた場合には,その制御性能の低下は最低限に抑えられ,逆伝達関数法よりもはるかに高い精度で制御できることを実験的に明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スティックスリップ現象を表現できる摩擦モデルを組み込んだ数値解析モデルを構築することで,上部構造物を弾性体とした直置き型構造物のすべり挙動を数値解析によってより正確に表現できるようにした.これによって,スティックスリップ現象が伴う直置き型構造物が振動台制御に与える影響を,実験の実施前に数値解析によって比較的高い精度で表現できるようになり,振動台実験の実施を大きく補助することが可能となった.この数値解析によって得られた結果は実際の振動台実験結果ともよく対応しており,その数値解析の精度の高さが保証された. 直置き型構造物により即した試験体を用いた実験においても,非線形制御手法NSBCの適用性の高さが確認された.これによって,直置き型構造物をストッパーと接触させることによってすべり変位を抑制する振動台実験への準備も十分に整った.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の課題遂行において,以下の内容に関する検証が重要であり,次年度に取り組む. ・振動台よりも重たい直置き型構造物を積載させた実験におけるNSBCの制御精度の検証 ・直置き型構造物の過大残留すべり変位量を抑制するストッパーの実験的検証とその実験におけるNSBCの制御精度の検証.
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