研究課題/領域番号 |
20H02230
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
廣瀬 壮一 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00156712)
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研究分担者 |
斎藤 隆泰 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (00535114)
中畑 和之 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20380256)
古川 陽 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60724614)
丸山 泰蔵 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (90778177)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超音波イメージング / 超音波非破壊評価 / 時間反転法 / 粒子フィルタ法 / MUSIC / スパース推定法 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は,AIを利用した効率的超音波非破壊評価システムの構築にある.令和2年度は第一のステップとして,多点計測データを用いた各種超音波イメージング法の最適化や改良を検討し,それぞれの手法の重要因子の抽出を行った. まず,多点計測データを用いた超音波イメージング法として,時間反転法,粒子フィルタ法,MUSIC法,並びにスパース推定法を取り上げ,それらの最適化あるいは改良を検討した.時間反転法は波動の集束状況を可視化して欠陥評価を行う手法であるが,これまでの定性的な評価に代えてトポロジー感度を欠陥検出指標に用いることによって定量的評価を可能とした.粒子フィルタ法では,欠陥の幾何学パラメータを粒子の状態量として,多数の粒子の確率分布を追跡して欠陥形状の推定する手法を開発した.MUSIC法はこれまで遠方散乱場の位相情報に着目した点波源の推定に適用されていたが,空洞などの有限の大きさを持つ欠陥へ適用性を拡張した.スパース推定法は大部分がゼロである未知数を持つ悪条件の方程式を最適化手法によって解く方法で,先行研究では点波源の推定への応用に限定されていたが,本研究ではき裂面上での等価モーメントテンソルを未知数とする散乱波の表現を用いることによってき裂形状の推定を可能とした. 次に,各種超音波イメージング法を用いた欠陥検出における重要因子について数値シミュレーションを用いて検討した.その結果,時間反転法においてはトポロジー感度を欠陥検出指標に用いることによって欠陥検出精度が向上すること,粒子フィルタ法では用いる粒子の個数と計算時間のバランスが重要であること,MUSIC法では欠陥イメージの分解能が用いる超音波の周波数に依存すること,スパース推定では推定の際に適切なパラメータを選定することが重要であること,等が明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要では主に数値シミュレーションで得られた研究成果を述べたが,いくつかの実験結果にも手法の適用を行い,レーザ超音法による映像化,アスファルト舗装内部の映像化,疲労き裂の接触状態の評価,CFRP-コンクリートの接着評価,薄板表面欠陥の評価,炭素繊維強化樹脂材料の評価など,超音波法の実用的な応用についても検討を行っている.また,本研究では令和3年度以降の第二ステップとして,令和2年度で検討した超音波法に対してAIによる診断・評価を適用し,「スマート超音波非破壊評価システム」を構築することとしている.深層学習をはじめとするAI技術は日進月歩であり,いち早く最新の技術を超音波法の診断・評価に適用する必要がある.このことから,本研究では令和3年度以降の研究内容を先取りして,令和2年度においてニューラルネットワークなどの機械学習を用いた超音波評価の開発をすでに始めている.以上のことから,当初の計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の成果に関しては当初の計画以上に進展させることができた.前述のようにAI技術は日進月歩であり,いち早く最新の情報を取り入れて超音波法の診断・評価技術を構築する必要がある.一般にAI技術の応用では多量のデータを必要とするが,実験及び現場計測と数値シミュレーションとの連携をとりつつ,今後も計画を先取りして研究を進める予定である.なお,超音波法は安全で比較的安価な非破壊技術であるので,多様な適用性を持っている.国内外のニーズにアンテナを張り,想定している実用的課題以外の課題も解決できるよう努める.
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