研究課題/領域番号 |
20H02232
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
八木 知己 京都大学, 工学研究科, 教授 (30293905)
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研究分担者 |
野口 恭平 京都大学, 工学研究科, 助教 (70802685)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 耐風安定性 / 空力振動 / 風洞実験 / 数値風洞実験 / 渦励振 / フラッター / 橋梁 / 高欄 |
研究実績の概要 |
想定外の強風下における構造物の耐風安定性をより精緻に評価する方法の確立を目的として,以下の二つの課題に大別される内容の研究を実施した.その成果を列記する. 1)構造物の細部が空力振動特性に及ぼす影響の解明ならびに数値実験法と風洞実験法における構造細部のモデル化の検討 高欄を形成する部材は極めて微細であるため,風洞実験や数値実験を実施する上で,より簡易なモデルで置き換える必要がある.2020年度は,長大斜張橋で用いられることの多い六角形断面で検討したが,2021年度は高欄が端部に設置され,より高欄の空力的な影響の大きい端二箱桁断面を用いて検討を行った.風洞実験の結果から,渦励振応答振幅は高欄の空隙率以外にも,中間横部材の断面辺長比や部材の本数などの要因が寄与することが分かった.さらに数値流体解析において,高欄を多孔質体でモデル化することを試みた結果,静的空気力の計測では妥当性が確認されたが,渦励振応答については,より詳細な検討が必要であることが明らかとなった.塔構造物における隅角部の形状がギャロッピングを安定させる効果について検討した結果,カルマン渦放出が抑制されると自己励起渦が顕在化し、ギャロッピングの発現風速を制御している可能性が明らかとなった.並列ケーブルの表面にスパイラル突起を設置すると,空力振動の抑制効果が高いことが明らかとなった. 2)高風速域における空力振動現象の把握 本研究では,構造断面の高風速域・大振幅域における3自由度自励振動について,相対迎角と相対迎角速度でどの程度まで説明できるのかを明らかにすることを目的とし,ねじれ1自由度状態における大振幅振動時と連続回転時の非定常空気力を風洞実験により計測し,比較検討を行った.その結果,模型を連続回転させて空気力を測定することで,高風速域・大振幅域における耐風安定性の評価がある程度可能であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,当初,1)構造物の微細部のモデル化に着目した数値実験法と風洞実験法の検討と2)高風速域における空力振動現象の把握という大きく分けて二つのテーマを中心に検討進めていたが,1)のテーマに関する風洞実験を実施する上で,構造細部のモデル化もさることながら,構造細部が空力振動現象に及ぼす影響に未解明な点が多数残されていることが判明した.そのため,1)のテーマに構造物の細部が空力振動特性に及ぼす影響の解明を加えて研究を実施した結果,橋梁桁断面における高欄,塔構造物における隅角部,ケーブル構造物の表面形状が空力振動特性に及ぼす効果について,新しい知見が多数得られている.従って,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は以下の3種類の検討課題の研究を実施する予定である. 1)構造細部が空力振動特性に及ぼす影響の解明:橋梁の高欄が桁の渦励振に及ぼす影響について,本年度は高欄細部の渦励振応答への効果をより詳細に検討する予定である.塔構造物における隅角部の形状がギャロッピングに及ぼす影響については,カルマン渦と自己励起渦の干渉メカニズムをより詳細に検討し,ギャロッピングに対する制振効果の検討のみならず,一般的な空力自励振動と渦の干渉効果を明らかにする予定である.また,スパイラル突起付きのケーブルを用いて,表面形状による単独ならびに並列ケーブルにおける空力振動の抑制効果,ならびにそのメカニズムを考察する予定である. 2)数値実験と風洞実験における構造細部のモデル化に関する検討:上記1)の研究成果を用いて,高欄全体を簡易的なモデルに置き換えられるのか,もしくは最上段部材のみを忠実に再現し,他の部材を簡易的なモデルに取り換えることで,渦励振応答を再現できるのか,風洞実験結果ならびに数値実験により明らかにする予定である.以上より,構造物における格子状の微細部が空力振動に及ぼす影響の解明,ならびにそのモデル化方法を提案する予定である. 3)発現風速よりも高風速域における空力振動現象の解明:各種フラッター現象を対象に,発現風速よりも高風速域の状態で如何なる挙動を示すのか,明らかにする予定である.これまでの研究で,高無次元風速域における大振幅応答を,構造物の相対迎角と相対迎角速度で定義した空気力によってある程度説明できることが明らかとなっている.本年度は、相対迎角と相対迎角速度で説明できる現象とできない現象について,その相違を理論的に考察を進める予定である.さらに,連続回転中の物体の空気力を風洞実験ならびに数値実験によって比較検討し,回転中の空気力と振動中の空気力の差異も明らかにする予定である.
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