研究課題/領域番号 |
20H02234
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園田 佳巨 九州大学, 工学研究院, 教授 (40304737)
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研究分担者 |
玉井 宏樹 九州大学, 工学研究院, 助教 (20509632)
別府 万寿博 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (90532797)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 打音検査 / コンクリート構造物 / 劣化損傷(浮き・剥離) / 深層学習 / 繰り返し衝撃荷重 |
研究実績の概要 |
2021年度は,浮き・剥離等の高精度な異常検知を行うための基礎的段階として,数種類の人 工的な欠陥を有するモルタル版供試体(打ち継ぎ目,プラスチックフィルムの内在で付着切れ)を製作し,各供試体に鋼球を所定の高さから落下させる繰り返し衝撃載荷を行い,載荷回数の増加とともに変化する打音データを計測・収集した。 それと同時に,異常検知の検出方法として以前から研究代表者らが行っていた3つの特徴量(振幅比,継続時間,周波数特性)による評価と打音の音圧-時間曲線に時間周波数解析(短時間フーリエ変換・ウェーブレット変換)を行って得られた時間周波数スペクトログラムの画像を入力データとしたAE(オートエンコーダー)による評価を比較検討し,AEの方が異常検知の能力が高いことを示した。さらに,打音を時間周波数スペクトログラム画像に変換して深層学習させるには,単なるAEよりも畳み込み層を向けたCAE(畳み込みオートエンコーダー)の方が欠陥検知性能が高くなる場合が多いことを確認した。残念ながら,現時点ではAEによる画像の再生ロス値を用いて損傷の進展度を正確に把握することは実現できていないが,この点については2022年度に解消させたいと考えている。 なお,これまでの研究成果については,当該分野の代表的な国際誌であるStructural Health Monitoring(https://journals.sagepub.com/home/shm 過去5年の平均IF5.861)に2021度末に投稿し,現在,査読意見による修正を行った原稿を提出中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を開始した2020年度は,COVID-19の影響を受けて実験が予定通りにスタートできなかったが,2021年度は打継ぎ目を有するモルタル版供試体および所定の面積のプラスチックフィルムを挿入して打継いだモルタル版供試体を製作し,繰り返し衝撃荷重を与えながら打音検査を順調に実施することができ,打継ぎ目箇所から拡がる内部損傷の進展とともに変化する打音データを計測・収集することができた。 また,打音試験と同時に打音の評価方法の開発を行い,AE(オートエンコーダー)を用いて健全箇所の打音データ(時間周波数解析によるスペクトログラム)を深層学習させ,人工的な欠陥箇所(打継ぎ目およびプラスチックフィルムで付着特性を喪失した箇所)で得られた音を的確に非常に高精度に検知できることを確認した。 これらの成果が得られたことから,2021年度は「概ね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は最終年度となることから,昨年度までに解決できなかった問題について検討を行う予定である。 1)現実のRC構造物同様に供試体内に鉄筋を配置し,欠陥の位置・寸法と配筋状態が打音に与える影響について検討を行う。また,損傷の進展を追跡する方法として繰り返し衝撃荷重入力に加え,電食試験による鉄筋腐食率をパラメータとした検討も追加する。 2)AE(オートエンコーダー)で正確に異常箇所を把握できることは確認できたが,種々の供試体の損傷度の進展を定量的に評価するレベルには達していない。従って,今年度はベイズ推論によるマルコフ連鎖の考えを導入した評価を行い,損傷の進展状況を正確に把握できる手法の開発を行う。
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