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2022 年度 実績報告書

大気圧変動を外力とした原位置岩盤の浸透特性評価手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20H02238
研究機関埼玉大学

研究代表者

長田 昌彦  埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00214114)

研究分担者 竹村 貴人  日本大学, 文理学部, 教授 (30359591)
富樫 陽太  埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90753294)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード岩盤の浸透特性 / 大気圧変動 / 間隙空気圧 / モンテリ地下研究所 / オパリナスクレイ / 時系列解析 / 岩盤の熱伝導特性
研究実績の概要

2022年度は,室内実験とモンテリ地下研究所での計測を中心に実施した.
室内実験では,粘板岩と田下凝灰岩のブロック試料を用いたトランジェント法とオシレーション法を,大気圧変動が生じうる圧力範囲で実施し,両ブロックの固有透過度を推定した.オシレーション法で用いた周期は,2021年度の2分,4分,8分の3段階から,4分から88分までの12段階として,位相のずれと振幅減衰の傾向を調べた.その結果,周期が長くなると,振幅減衰の割合は小さくなり,位相のずれも小さくなる傾向を定量的に把握した.また,両試料を市販の定圧下透気試験装置を用いて固有透過度を決定し,上述の2手法で得られた結果と比較した.その結果,両手法とも同じオーダーの固有透過度が得られることが確認された.以上の結果の一部は,2023年度のISRMコングレス(ザルツブルグ)で公表予定である.
上述の室内実験結果を受けて,原位置での浸透特性の変化傾向の把握手法として,サイトの初期固有透過度をトランジェントパルス法で求め,その後の大気圧変動に対する応答から,過渡的な浸透特性の変化を捉えることとし,モンテリ地下研究所での計測の準備を進めた.準備内容は,主に,直径25mmの小孔を用いてトランジェントパルス法を実施するためのメカニカルパッカーの自作,および直径5mmの細孔での気圧計測装置の自作である.
以上を踏まえて,2023年3月にモンテリ地下研究所に赴き,深さの異なる新しい小孔を3本,細孔を1本掘削して原位置でのトランジェントパルス法の適用性を検討した.小孔はトランジェントパルス法を実施したあと,長期計測に向けてシリコンラバーで密封して観測を開始している.細孔は,そのままの状態として,次回訪問時に再度トランジェントパルス法を実施してすることにより,長期的な浸透特性の変化を観測しうるか否かを確認する予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウィルス感染拡大のため, 2年連続でスイス・モンテリ地下研究所での現地作業が実施できなかったが,2022年度には実施でき,長期観測データが得られることが期待できる.コロナ下において,海外サイトの代わりに国内サイト(吉見百穴)を利用して,機器開発をしてきた.その結果の一部は,国内学会誌(応用地質,2023年2月)にて公表した.また上述の実績には記入しなかったが,原位置のトランジェントパルス法では,通常とは境界条件が異なるため,数値解析的な検討も合わせて実施しており,実測値と計算結果を比較可能な段階まで至っている.

以上より,「概ね順調」と自己評価した.

今後の研究の推進方策

2022年度の室内実験結果より,一定周期で一定の気圧振幅を与えた場合の位相のずれと振幅減衰比が求まった.2023年度は最終年度として,様々な周期と振幅を有する大気圧変動への応答が,個々の周期での挙動を重ね合わせた挙動として推定しうるかを検討する.
室内実験の結果は,乾燥状態における挙動であり,原位置では水分量が変化する.試しに実施した湿潤状態における試験結果は乾燥状態における挙動とは若干異なっていることがわかっている.この違いを説明するために,飽和養生装置(既設)を用いて,徐々に水分量を変化させつつ,気圧変化に対して位相や振幅がどのように変化していくのかを検討する実験を行う予定である.
モンテリ地下研究所での長期観測は,現在壁面が乾燥しにくい「クローズド」な環境で計測を実施している.2023年度後半に現地を訪問した際には,クローズドな環境を作り出しているニッチの扉を開けることで,「オープン」な環境を作り出し,環境条件の違いによる応答の違いを把握する.前段の水分量を変化させた室内実験との比較を通して,飽和状態から乾燥状態に至る過程での,大気圧変動に対する浸透特性の変化傾向の特徴を明らかにし,本研究の結論としてとりまとめを行う.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] ワンボードマイコンArduinoでの原位置データ測定と実験装置作成2023

    • 著者名/発表者名
      竹村貴人, 作道 悠, 細野日向子, 長田昌彦
    • 雑誌名

      応用地質

      巻: 63 ページ: 307 - 313

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 史跡でのIoT技術の活用事例2023

    • 著者名/発表者名
      長田昌彦, 小澤一稀, 船引耕平, 金子義人, 高橋優輔
    • 雑誌名

      応用地質

      巻: 63 ページ: 297 - 306

    • 査読あり
  • [学会発表] Numerical approach to evaluate the influence of water saturation on the strength of Neogene Tuff in Utsunomiya city, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Ranaweera N, Togashi Y, Osada M, Kawanoue R
    • 学会等名
      ISRM, Proc. EUROCK2022
    • 国際学会
  • [学会発表] 含水に伴う田下凝灰岩の強度変化と平均応力変化によるモデル化2023

    • 著者名/発表者名
      小田部 晏彦,富樫 陽太,長田 昌彦,畠山 健
    • 学会等名
      土木学会, 第49回岩盤力学に関するシンポジウム
  • [学会発表] 廃棄物埋設における掘削に伴う岩盤の力学状態と水理特性を踏まえた地下水移動評価の考え方2023

    • 著者名/発表者名
      東原知広, 市耒高彦, 入江正明, 長田昌彦
    • 学会等名
      土木学会, 第49回岩盤力学に関するシンポジウム
  • [学会発表] 廃棄物埋設における岩盤の力学水理連成試験機の製作と動作確認試験2023

    • 著者名/発表者名
      市耒高彦, 東原知広, 入江正明, 長田昌彦
    • 学会等名
      土木学会, 第49回岩盤力学に関するシンポジウム
  • [学会発表] Development of a test method for the effects of cyclic dry and wet damage to archaeological stone JpGU 2022 開催年月日 2022年5月22日 - 2022年6月3日 記述言語 英語 会議種別 ポスター発表 主催者2022

    • 著者名/発表者名
      Takato Takemura
    • 学会等名
      JpGU2022
  • [学会発表] 外気圧の周期的変動に対する岩石ブロック内の気圧応答2022

    • 著者名/発表者名
      長田昌彦, 大沢光司, クリスティーナプツリ, 野澤海人
    • 学会等名
      日本応用地質学会, 令和4年度研究発表会
  • [学会発表] 亀裂性岩盤の3次元透水テンソルの推定方法と異方応力下での透水性に関する検討2022

    • 著者名/発表者名
      竹村 貴人, 細野 日向子, 作道 悠, 川北 章悟, 鈴木 健一郎
    • 学会等名
      日本応用地質学会, 令和4年度研究発表会
  • [学会発表] Influence of advection and diffusion on water content changes in tuff deformation during the drying process2022

    • 著者名/発表者名
      Neranjan Ranaweera, Yota Togashi
    • 学会等名
      地盤工学会, GeoKanto2022

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公開日: 2023-12-25  

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