研究課題/領域番号 |
20H02240
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清田 隆 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70431814)
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研究分担者 |
上田 恭平 京都大学, 防災研究所, 助教 (60649490)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 液状化 / 年代効果 / 非排水繰り返し中空ねじり試験 / 非排水繰り返し三軸試験 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
地震時の液状化アセスメントについて、その精度向上の障壁となっている要因の一つに、地盤の「年代効果」が液状化強度に及ぼす影響を適切に表現できないことが挙げられる。この年代効果は、長期圧密や地震履歴等による地盤の密度化、土粒子構造の変化、および経時的なセメンテーション効果に起因すると考えられており、特に古い地盤では相互の関係が液状化強度に影響を及ぼすが、その詳細は未解明な点が多い。また、従来の数値解析による地盤変形検討では、液状化地盤の大変形レベルの挙動が適切にモデルに反映されていないことから、得られる結果の信頼性が十分ではなかった。本研究ではこれまで、上記の液状化強度変形特性に及ぼす年代効果と大変形時の挙動に着目した室内土質試験・数値解析を行ってきた。 昨年度までの研究活動では、非塑性細粒分を含むセメンテーション効果を有しない原地盤試料を用い、原位置密度に揃えた再構成供試体を作製し、Vs計測を併用した非排水繰り返し三軸試験を実施した。これにより、土粒子構造を考慮して推定した液状化強度を用いることで、東北地方太平洋沖地震や十勝沖地震による原位置の液状化の傾向を適切に説明することができた。また、この液状化強度の推定手法が火山灰質土でも適用できること、および推定に用いるパラメータは土粒子の破砕性に依存することを明らかにした。液状化地盤の大変形挙動の検討については、両振幅軸ひずみ100%以上まで計測可能な中空ねじりせん断試験機を用いた実験により、液状化に伴うひずみの増加により限界状態線の勾配が低下する傾向が確認された。これは、液状化と共に地盤が損傷していくことを示している。また、系統的に実施した実験結果からひずみの進展による地盤のせん断抵抗角の低下をモデル化して数値解析に導入し、大変形に至る液状化試験の挙動を適切に表現することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの2年間の研究活動では、先ずセメンテーション効果が液状化強度特性に及ぼす影響について、系統的な非排水繰り返し三軸試験を実施してきた。実験結果の分析により、土粒子構造とセメンテーション効果の双方を有する地盤の液状化強度予測のアイデアや、液状化特性と累積損失エネルギーとの関係を得ることができた。次に、非塑性細粒分を含むセメンテーション効果を有しない原地盤試料を用い、原位置密度に揃えた再構成供試体を作製し、Vs計測を併用した非排水繰り返し三軸試験を実施した。これにより、原位置PS検層の結果を原地盤の土粒子構造を反映するパラメータとして利用し、推定した液状化強度を用いることで、過去の地震による原位置の液状化の傾向を適切に説明することができた。具体的には、過去の地震で液状化しなかったにもかかわらず、従来手法では液状化と判定された地盤について、本研究が示す手法により液状化しなかった事実を説明することができた。また、この液状化強度の推定手法を北海道地区で採取した複数の火山灰土にも適用した。その結果、本推定手法が火山灰土に対しても適用できること、および液状化強度推定に用いるパラメータは土粒子の破砕性に依存することを明らかにした。 大ひずみ液状化特性の検討については、せん断ひずみが20%~100%に達する領域の挙動を中空ねじり液状化試験により検討し、せん断帯の発達を伴う挙動と解釈できるせん断強度の低下現象を確認した。本研究では、これを大ひずみ液状化特性の一つとして「繰返し荷重に伴うエネルギー損失とφの低下率φ/φfの関係」として整理し、定式化を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
自然地盤が堆積してから現在に至る過程を考えると、例えば、①堆積後に地震履歴や応力履歴を経て土粒子構造が変化した状態からセメンテーションが作用するケース、②上記の後に大きな地震履歴(液状化履歴)を受けたケース等が想定されるが、土粒子構造とセメンテーションの両者の影響を受けるVsを用いて、上記の影響を加味した液状化強度推定法の構築を目指す。また、これまでは所謂応力法の観点から液状化アセスメントを実施することを念頭に置いていたが、最終年度ではこれまでに実施してきた系統的な実験結果を基に、年代効果が液状化に至るまでの損失エネルギーに及ぼす影響を検討する。更に、粒子破砕性が液状化強度の推定に大きな影響があることが明らかになったことから、最終年度では単粒子破砕試験を実施することで、その影響を定量的に示す。また、従来メンブレン貫入の影響で液状化試験の実施そのものが困難であった礫質土も対象に、年代効果に着目した液状化強度推定手法の適用性を検討していく。 大ひずみ液状化特性に関する検討については、これまでの実験を継続して行うとともに、「繰返し荷重に伴うエネルギー損失とφの低下率φ/φfの関係」を踏まえた有効応力解析プログラムの拡張を行う。ちなみに、簡易的に定式化した試計算を既に実施しており、大変形に至る液状化試験結果を適切に表現できる可能性が高いことを確認している。最終年度後半では、拡張したプログラムの主要パラメータの設定方法の検討、および妥当性の検証を行う予定である。これは、これまでに実施された遠心模型実験結果や、過去の地震による被災事例を対象とする予定である。
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