研究課題/領域番号 |
20H02244
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
飛田 哲男 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (00346058)
岡村 未対 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (50251624)
清田 隆 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70431814)
兵動 太一 富山県立大学, 工学部, 講師 (80749078)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Palu震災 / 直下型地震 / 緩傾斜地盤 / 長距離流動 / 液状化 / 水膜現象 |
研究実績の概要 |
まず、Landsat 8データから正規化植生指数(NDVI)画像を作成することにより、流動によって誘発された被害の程度を評価した。また、ドローンを使用して得られた航空測量データから被害地域のDEMを作成することにより、流動によって引き起こされた地形の変化を評価した。一方で、現地で採取した試料の粒径分布を分析した結果、現地土が液状化発生しやすい地盤であることを確認でき、水膜現象の観点から検討を行った。水膜の形成を再現するために、1次元模型実験を実施した結果、浸透性の低い層の存在が地震後に地盤内に水膜を引き起こしたことが分かり、これが大規模な遅れ地盤変位の発生の原因と推定される。 次に、液状化に伴う遅れ流動破壊現象の発生機構の解明を目的とし,砂とシルトから成る成層緩傾斜地盤に対し二次元有効応力解析を行った.その結果,液状化層の上部にシルト等の透水係数の小さな土層が存在する場合,間隙水の地表への排水が砂-シルト層境界付近で阻害され有効拘束圧が低下すること,またそれに伴いせん断強度が低下し地盤の傾斜よる初期せん断力を下回った時点で側方流動が発生する遅れ流動破壊機構が推定される. さらに、緩斜面の動的遠心模型実験を行い,震動終了後の間隙水のマイグレーションによる地盤の変形進行について調べた。その結果,加振後に地盤浅部において稼働摩擦角の一時的な増加と体積ひずみ及びせん断ひずみの増加を確認することができた。 最後に、中空ねじり試験装置、および三軸試験装置により、原位置採取試料を含む砂質土試料を用いて地下水の表層地盤への流入が継続した場合の地盤の大変形挙動を検討した。その結果、非常に緩い勾配の斜面でも、地下水の流入が継続すると容易に大変形に至ることを示した。また、地すべりが生じた箇所のボーリングデータを用い、地震発生時に被圧が生じていた可能性を想定した液状化判定を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で海外(インドネシア国・パル市)から獲得予定のデータの入手が遅れていたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)現地(インドネシアパル市内の崩壊箇所)の地質構造を再現し、模型実験(1g場の振動台実験または遠心模型実験)を実施する。また、長距離流動を表現できる解析法により流動現象を再現し、流動化発生機構を明確にする。 (2)液状化の遅れ流動破壊が発生する前段階として,砂-シルト境界部への間隙水の流入によって膨張現象が現れる.これまでの数値解析的検討により,遅れ流動破壊の発生機構は確認できたが,上記膨張量と流動量との相関については未解明である.そこで,今年度はこの相関について数値解析的検討を行う.また,必要に応じて室内試験を行い,間隙水の流入量と土の体積膨張量との関係を明らかにする. (3)砂質土の液状化強度や非排水せん断強度は細粒分含有率(FC)の影響を受けて変化することが知られている。さらにFCが同じでも,母材となる砂粒子や細粒分の粒径によっても変化することが報告されている。そこで、砂と細粒分の粒径の比が一定で異なる粒度の試料の非排水せん断試験を行い,粒径が非排水せん断強度に及ぼす影響を調べる。 (4)昨年度の液状化判定はN値による簡易判定であったことから、今年度は原位置試料を用いた三軸液状化試験を実施し、その結果を用いた液状化の判定を行う。また、昨年度に引き続き中空ねじり試験を実施し、流動の発生から大変形に至る挙動に及ぼす地盤密度の影響を検討する。 (5)大型繰返し三軸試験装置を用いて礫を含む現地試料を用いた動的挙動の測定を行う.また、ベンダーエレメント試験装置を用いせん断弾性係数のデータ蓄積を行い,当該パラメーターの評価式の提案を目指す.
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