研究課題/領域番号 |
20H02248
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
峠 嘉哉 東北大学, 工学研究科, 助教 (90761536)
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研究分担者 |
西野 智研 京都大学, 防災研究所, 准教授 (00609894)
城戸 由能 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50224994)
高根 雄也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80711952)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 林野火災 / EOF解析 / ウェーブレット解析 / UAV / SfM / 焼損度 / 乾燥害 / 複合災害 |
研究実績の概要 |
本研究は,大規模林野火災を対象として極端気象災害としての乾燥害を水文学的に評価することを目的とする.本年度は,国内外の林野火災における乾燥度評価手法の検討,全球の林野火災の空間分布について検討を行うと共に,2021年西宮林野火災を対象に各種の現地調査を行った. 日本国内の林野火災統計データに基づき,各種の乾燥指標を用いて適切な乾燥度評価手法を検討した.その結果,地域・時期によって適切な乾燥指標が異なることが分かった. 大規模林野火災の2021年足利市で生じた西宮林野火災では,焼損跡の調査や消防等への聞き取りを実施した.現地調査では,例えば焼損度の広域観測を実施することで急速な延焼過程に寄与した可燃物が林床可燃物であったことを示した.焼損領域の透水試験を実施し,焼損地と未焼損地の間で透水係数の違いが小さいことを示した. また,2017年釜石火災が生じた領域で継続的な調査を実施し,令和元年台風19号による火災後豪雨の影響をUAVデータに基づくSfM処理によって調査した.豪雨前後の地表面変化を捉えた稀有なUAV観測であり,その後の更なる地表面変化を捉えるための貴重な観測記録となった. 全球の林野火災焼損面積の時空間的分布について,EOF解析によって主要なモードを抽出した後,Wavelet解析を実施する事でENSO等の気候指標の影響を統計的に調べた. 海外の林野火災多発地域の一つであるインドネシア・カリマンタン島のセバンガウ川・カハヤン川流域を対象として,表流水・地下水流動モデルを作成し,小雨年(2009年)・多雨年(2010年)降水量を用いた解析を行い,多発エリアの地下水位および地表浸透量を比較・考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度実施予定の内容は,大規模林野火災を乾燥状態の極端気象災害として捉えた上で,(1)大規模林野火災が生じる際の条件や,(2)乾燥条件における燃焼過程について現地調査や数値解析を用いて考察することにあった. (1)については,国内外で乾燥指標と火災発生状況を比較したことで,その精度や適切な乾燥度の表現方法について検討した.乾燥指標だけでなく,泥炭火災が頻発するカリマンタン島での検討では,表流水・地下水流動モデルによる定量的モデルの有効性を示した.これらの一部は既に結果がまとまっており,論文化を準備している段階にある.また,全球の火災発生状況・日本国内の土壌水分量の時空間分布の傾向からENSO等の気候指標と比較した研究は,既に複数の国際誌に登載されている. (2)については,日本国内では焼損度が高くなりにくいことを衛星解析を基に立証した.足利市で生じた大規模林野火災である西宮林野火災の事例では,極めて急速な延焼過程についての貴重な調査記録を収集した.これらについても,複数の論文の搭載が決定した. これらは既に複数の論文として登載が決定されている. 以上より,当初の計画以上に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に得られた成果を踏まえ,得られた成果の論文化を進めると共に,下記について重点的に取り組む. まず乾燥度の表現方法については,地域・時期によって適切な手法が異なる原因について調査し,特に現地観測や火災統計に基づく立証を検討する.また,乾燥が生じる気候条件としてフェーン現象の生じ方について過去の気象場から分析する手法を検討する.また,林野火災の規模を定量的に評価・分析する手法を検討する. 2017年釜石火災の跡地で生じた火災後豪雨の被害について,その被害状況をUAV観測から継続的に調査すると共に,火災・豪雨の双方についての極端性について複合災害として評価する. 足利市の西宮林野火災での調査結果を更にまとめ,当時の延焼過程の状況について考察を深める.今年度は特に収集した焼損サンプルの分析を進める.
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