本研究では、研究代表者が開発している全球河川モデルCaMa-Floodを基盤ツールとして、河川水動態シミュレーションを衛星地表水観測と妥当に比較検証する手法を開発した。衛星データとして、複数の浸水域プロダクトと衛星高度計プロダクトを用いて、それぞれの衛星観測プロダクトの制約や不確実性を精査した上で、河川モデルとの比較を地球上のあらゆる地域で行うための汎用的なワークフローを構築した。 昨年度までに現地観測河川流量データ・衛星による水面標高と浸水域データを全球河川モデルをシミュレーションと比較する手法が確率されたため、2023年度はこれらを統合してシミュレーションの精度を包括的かつシステマティックに評価する「全球河川モデル精度ベンチマークシステム」を開発した。観測データとモデルグリッドとの対応づけを半自動化して、モデルと観測での時系列データ比較、評価指標の地図表示による空間分布評価、評価指標のスコア化によるモデル間比較など、多様な精度評価を効率的に実施できるようになった。評価指標のスコア化については、変数ごと・評価指標ごとに異なる特徴を持つため、絶対スコア・相対スコア・順位スコアといった異なるスコア化手法を提案し、モデルアップデート時の性能変化などの詳細な分析が可能になった。開発したベンチマークシステムは学術論文にまとめて査読中であり、受理後に河川モデリングコミュニティに公開して、河川モデル精度評価の標準的ツールとして採択されることを目指す。
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