研究課題/領域番号 |
20H02253
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
稲垣 厚至 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (80515180)
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研究分担者 |
小田 僚子 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (50553195)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 熱画像風速測定法 / 粗度境界層 / 都市大気境界層 / 微気象観測 / 都市街区内風速 / アンサンブル平均 |
研究実績の概要 |
本年度は熱画像風速測定法で得られた都市街区内の地表面近傍風速分布について,風向別のアンサンブル平均を実施し,平均的な街区内風速分布を測定することを試みた.前年度行った熱画像風速測定法と地上点計測の観測に加え,ドップラーライダーを用いた鉛直一次元風速測定を同期した観測を実施した.ドップラーライダーによる観測結果より,粗度境界層(70m程度)より上空の風速が観測できるため,地表面近傍風速分布をアンサンブル平均する際のリファレンス風速に用いた.その他に,地上観測点を1点増設し,また地表面熱収支を測定した.観測は,東京工業大学の敷地内において,夏季期間内(7月から9月)の14日間,正午の前後1時間付近にて実施した. 解析について,昨年度吟味した観測パラメータに基づき熱画像風速測定法を実施し,地上風速測定地との相関が決定係数0.7以上であったデータのみ解析に使用した.また,リファレンス風速に基づき風向(東西南北)で場合分けしたアンサンブル平均を実施し,各風向に対する平均的な街区内風速分布を出力した.その結果,道に沿った流れの他に,建物を迂回する2次元的に複雑な流れなどが形成されることを定量的に示した. このアンサンブル平均の妥当性については前年度の数値計算による評価も実施しているが,本観測データからも補足的に検証を行った.上空のリファレンス風速と点計測で測定された地上近傍風速との比較を行い,両者が連動しているのかを調べた.その結果,風速については緩い正の相関がみられ,街区外の上空風速の増減が建物に隔てられた地上近傍の風速に影響していることが見て取れた.風向に関しては,上空の風が道に沿って吹く際には概ね良い相関となったが,道に直交して吹く場合は風向が定まらなかった.やや自明な結論ではあるが,これらは上空と街区内風速の連動を示し,今回の条件付きアンサンブル平均操作の妥当性を示すものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である,熱画像風速測定法が都市街区内風速の観測に使用できることを示し,また,アンサンブル平均による街区内の平均風速分布を定量的に評価することが可能であることを示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により,街区内のアンサンブル平均的な街区内風速分布を得る手法を開発したが,今後は同手法を用いて街区内風速の非定常成分の空間分布について検討する.また,より広い空間に対して,同手法を適用することを試みる.
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