前庭電気刺激の刺激開始前後において,人の歩行位相と身体応答との間に強い相関が観察された.また下肢・上肢という二重倒立振子制御系として理解可能な応答が観察された.ただし,頭部,胸部,腰部の3つのRoll角から得られる曲率が実際に歩いた軌跡から得られた曲率よりも大きいことから,身体の傾きであるキャンバー角だけが要因で曲率歩行を行っているとは言えないこともまた示された.歩行者の観察始点における上下動固定という振幅変調は,歩行挙動の客観観察結果としての「すり足」は再現しなかった.一方で障害物に対する回避距離が増大し,軌跡が2群化した.これは回避対象物までの距離信頼性が低減した結果であると解釈できた.
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