全国的に小型車両を用いた新たなビジネスモデルによる旅客サービス,旅客サービスと福祉サービスとの統合,貨客混載などの事例が多く見られるようになっている.予備調査により,ビジネスモデルには様々な類型があることが判明したため,全国的に新たな情報を再度収集し,類型ならびにそのもとでの事例を整理した.また,ここで着目しているビジネスモデルを「統合的ビジネスモデル」と位置づけ,その概念を学会にて口頭発表した.
貨客混載を実施している大山町から得たデータを整理し,これまでに構築した数理計画モデルを用いて,その持続可能性,統合の効果を実証的に評価した.これにより,経済的な持続可能性を把握することができるようになり,加えて,どのエリアでの統合が効果的か,その効果が得られる条件についても統計的に特定することができた.一方,運転手という人的リソースの観点での持続可能性も把握できるようになってはいるものの,より簡易に評価できる方法論があればさらに有用性が高まるとの課題を得た.なお,ここで用いた数理計画モデルについては国外の雑誌に投稿し,査読付き論文として登載されるに至った.
一方,貨客混載以外のより一般的な統合の可能性を評価する場合については,それぞれの需要によって可能性が大きく変わるため,汎用的な方法論の開発は容易ではない.そこで,需要を与えて検討するというアプローチではなく,旅客の運送の合間にどれだけ兼業が可能かというアプローチを考案し,その考えに基づいた数理計画モデルを構築した.これにより,どの時間帯に何人の運転手を兼業に従事させることが可能か,その際に生じる損失はどれほどかを定量的に明らかにすることができた.この成果は学会にて口頭発表し,査読付き論文として投稿する準備を行っている.
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