研究課題/領域番号 |
20H02282
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
春日 郁朗 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20431794)
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研究分担者 |
星野 仁彦 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 室長 (20569694)
栗栖 太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30312979)
島崎 大 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (60322046)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非結核性抗酸菌 / 水道水 / 微生物再増殖 |
研究実績の概要 |
建物内の4か所の蛇口を対象として、滞留前後の水道水を採水し、培養法および次世代シーケンシングにより抗酸菌の解析を行った。4か所のうち、3か所で抗酸菌の16S rRNA遺伝子コピー数が滞留後に増加することが観察された。培養では前年度確立したcetylpyridiniumを用いた雑菌処理を施し、R2A培地、Middlebrook 7H10寒天培地、2%Ogawa培地を用いて30-32℃で培養した。単離したコロニーの16S rRNA遺伝子とhsp65遺伝子の塩基配列を決定して系統解析を行った。また、抗酸菌のhsp65遺伝子を標的としたアンプリコンシーケンシングも実施して、培養に依存しない方法で抗酸菌の多様性を評価した。滞留前後の水道水からは、M. avium、M. mucogenicumに近縁な株が主に単離されたが、次世代シーケンシングによる解析ではM. gordonaeなどが優占しており、培養法と非培養法との間には大きな差異が確認された。M. avium、M. mucogenicumに近縁な単離株を用いて、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒実験を行った。M. avium、M. mucogenicumに近縁な株の塩素不活化係数は、大腸菌の塩素不活化係数のそれぞれ1/200、1/800であり、塩素耐性が極めて高いことが明らかになった。また、高分解能質量分析計を用いて、微生物再増殖に伴って減少する水道水中の有機物についての解析を実施した。対照実験を工夫したスクリーニングにより、非生物学的な要因により減少する成分を除いて生分解性有機物の候補を抽出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病院における採水は新型コロナウイルス感染症の影響で実施できなかったが、代わりに研究分担者の施設における採水を実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)水供給システムにおけるNTMの多様性解析:今年度も、建物内の給水施設についてNTMの存在量や多様性に関する調査を継続する。特に、リスク評価の点で重要となるシャワー水並びにシャワーヘッドの解析に重点を置き、エアロゾルを通して吸引しうるNTMや温水環境におけるNTMの再増殖現象の実態を明らかにする。得られた単離株については、ゲノム解析を実施して、臨床におけるNTMとの比較を実施する。 (2)定量的微生物リスク評価:これまでの調査結果を統合するために、水供給システムにおけるNTMの定量的微生物リスク評価モデルを構築する。対象はM. aviumとして、原水中の濃度、浄水処理における除去性、給配水システムにおける再増殖を加味したモデルとして、水供給システム全体における重要管理点の抽出を行う。リスク評価は、感染確率に加えて、肺NTM症の障害調整生存年数を新規に推定して疾病負荷ベースの議論も行う。 (3)NTMが利用する生分解性有機物の解析:水道水・シャワーから単離したNTMを用いた再増殖実験を行い、NTMの再増殖を促進する有機物の探索を進める。今年度は、MS/MS分析にも着手することで、分子式だけではなく分子構造についても推定を行うことを目指す。
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