研究課題/領域番号 |
20H02286
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大下 和徹 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90346081)
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研究分担者 |
福谷 哲 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (00332734)
日高 平 京都大学, 工学研究科, 講師 (30346093)
日下部 武敏 京都大学, 工学研究科, 助教 (40462585)
高岡 昌輝 京都大学, 工学研究科, 教授 (80252485)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メタン発酵 / 下水汚泥 / 水素 / バイオメタネーション / Power to Gas |
研究実績の概要 |
本研究は、欧州で研究が先行する“Power to Gas”の概念により得られる水素を用いた有機性廃棄物メタン発酵の高度化を目的とする。 本年度は、下水汚泥を用いて、中温域(37℃)、および高温域(55℃)での、水素添加型バッチ式メタン発酵実験を、昨年度よりもより広い水素添加の範囲(~600mL/g-VTS)で行った。その結果、中温域、高温域ともに、H2添加量が300mL/g-VTS以上で、メタン濃度は96%以上になったが、生成量としては、H2添加量120~140mL/g-VTSで最大となり、特に高温消化汚泥でこの時のメタン濃度は20%上昇し70%となった。本条件では、酢酸資化性Methanosarcinaの増殖が確認された。このH2添加量以上では、ガス発生量が大幅に低下し、発酵阻害が認められた。前年度の結果と合わせ、下水汚泥では高温消化汚泥を対象とした場合に、H2添加量は、100~140mL/g-VTS程度が妥当であると考えられた。 また、食品廃棄物を対象に、半連続式の水素添加メタン発酵実験(HRT:20日)を、高温条件、有機物負荷:4.26(kgVTS/m3/day)、H2添加量0~2700mL/g-VTSで実施したところ、H2添加量が、2000mL/g-VTSまで、CH4濃度は75.7%まで直線的に増加したが、2700mL/g-VTSでは、ガス発生量が停止し、酢酸、プロピオン酸が蓄積した。 これら一連の結果に関連し、メタン発酵についての数理モデルのプロトタイプを構築した。標準的な下水汚泥の嫌気性消化シミュレーションに適用し、一般的な運転条件下で、標準的なバイオガス発生率が再現されることを確認した。そして、水素添加条件を計算することで、投入水素量に応じたメタンガス生成量の増加、過度の水素添加による微生物反応の阻害などを表現できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の基質を用いた水素添加型メタン発酵実験については、下水汚泥、食品廃棄物についてバッチ実験を終了し、食品廃棄物については、半連続式実験を行い、阻害が生じない水素添加条件を見出した。2022年度は、下水汚泥を対象とし同様の検討を実施する予定である。また、本実験に関連する水素添加に伴う微生物叢変化の解析については、リアルタイムPCRによる真正細菌の定量と、次世代シーケンシング(NGS)による真正細菌・古細菌のDNA解析を継続し、酢酸資化性および水素資化性メタン菌の増殖傾向を中心に半連続式実験との対応を考察する予定である。 水素添加型メタン発酵数理モデルの開発については、当初予定通り順調に進んでいる。 放射性ラベル化トレーサーを用いたメタン発酵実験によるモデルキャリブレーションについては遅れており、2022年度に実施予定である。 種々の基質による水素添加型メタン発酵プロセスのライフサイクル評価(LCCO2、LCC)については、 Power to Gas由来の余剰電力を用いた水電解から、高度化されたメタン発酵までのバウンダリー設定、対象サイトやシナリオの決定、関連するデータの文献収集を引き続き実施した。
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今後の研究の推進方策 |
放射性ラベル化トレーサーを用いたメタン発酵実験については、当初連続式実験を予定していたが、より簡便で安全性の高いバッチ式による実施を予定する。連続式実験装置は民間企業から7台を貸与しており、これらを十分に活用して、実験を加速する予定である。
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