研究課題/領域番号 |
20H02289
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
東 剛志 大阪医科薬科大学, 薬学部, 助教 (10634222)
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研究分担者 |
村上 道夫 大阪大学, 感染症総合教育研究拠点, 特任教授(常勤) (50509932)
臼井 優 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (60639540)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 薬剤耐性菌遺伝子 / 医薬品類 / 病院排水 / 消毒処理 |
研究実績の概要 |
令和2年度に引き続き、医療機関に由来する排水試料の調査を継続するとともに、下水処理場と河川を対象とした調査を行い、薬剤耐性菌と抗菌薬の実態について評価を行った。 その結果、医療排水中からWHOが対策を求めている多剤薬剤耐性菌のうち、本研究で対象としている全ての薬剤耐性菌が検出されることを明らかにした。医療排水中における薬剤耐性菌は、平均値で50 CFU/mL(CRE)、4,250 CFU/mL(ESBL)、132 CFU/mL(MDRA)、66 CFU/mL(MDRP)、29 CFU/mL(MRSA)、28 CFU/mL(VRE)であり、これらは大腸菌(5,050 CFU/mL)や腸球菌(61,667 CFU/mL)大腸菌群数(7,483 CFU/mL)と比較すると約1~2オーダー低いが、医療排水中に多種の薬剤耐性菌が存在していることは、病院における薬剤耐性菌の現状について考える上で興味深い知見であると考えられた。さらに、CREやESBL遺伝子の解析系についても構築を試み、薬剤地生菌と薬剤耐性遺伝子の両面から評価を行うことが可能であることを示唆する知見を得た。また、抗菌薬についてはAmpicillin(4.0 μg/L)、Cefpodoxime(1.7 μg/L)、Clarithromycin(0.3 μg/L)、Levofloxacin(2.6 μg/L)、Vancomycin(9.8 μg/L)が医療排水中から高濃度で検出される傾向があることを明らかにした。これらの結果は、医療排水が環境に及ぼすインパクトについて評価を行うことの重要性を示唆しており、河川環境中に放流される薬剤耐性菌の負荷を削減又は軽減するために有効な対策として、下水処理場に加えて、医療機関において有効な水処理技術の開発を試みていくことが重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた予定通り、医療機関に由来する排水、下水処理場、河川を対象として薬剤耐性菌と抗菌薬の調査を行い、その実態を明らかにするとともに、環境中における薬剤耐性菌の質と量についての解析系の構築を行うことが出来た。WHOにより緊急度が高い又は動向に注意を要するとされている多種の薬剤耐性菌が、医療排水中に存在していることを明らかにしたことは、病院における薬剤耐性菌の現状について考える上で意義深く、本研究課題により得られた成果の有益性を高める上で重要な知見となりうると考えられる。新型コロナウイルス感染症流行の影響に伴い、調査の実施時期が予定した計画よりも若干遅れたが、年度内に予定していた調査を行うことが出来た。以上の点から、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、研究計画の通りこれまでに実施した調査により得られた成果をもとに、物質収支に基づいて下水処理場に流入する医療排水由来の負荷割合の推定を行う。さらに、塩素やUVによる処理に加えてオゾン処理を適用し、医療機関に適応可能な新規排水処理システムの開発を試みる予定である。
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