研究課題/領域番号 |
20H02289
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
東 剛志 大阪医科薬科大学, 薬学部, 助教 (10634222)
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研究分担者 |
臼井 優 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (60639540)
村上 道夫 大阪大学, 感染症総合教育研究拠点, 特任教授(常勤) (50509932)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 病院排水 / オゾン処理 / 薬剤耐性菌 / 抗菌薬 / 定量的微生物リスク評価 |
研究実績の概要 |
排水を経由して河川環境中へと流入する薬剤耐性菌の負荷影響を把握するために、病院から公共下水道に放流される病院排水とこれらの排水を処理する下水処理場、下水処理場における処理後の放流水が流入する河川を対象に実施した、これまでの調査で得られた結果を基にして負荷割合の推定を行った。 その結果、対象とした下水処理場の流入水から検出される薬剤耐性菌のうち、処理区域内に位置する全病院の排水に由来する負荷割合は最大で1%~9%、河川において処理水に由来する薬剤耐性菌の負荷割合は最大で25%~88%と推計されることを明らかにした。また、病院及び下水処理場の排水、河川水について各種抗菌薬への耐性状況について評価を行ったところ、β-ラクタム系の抗菌薬への耐性獲得率はいずれの水試料についても100%、ニューキノロン系については50%~80%程度と高い耐性率を有する傾向がみられることを明らかにした。医療排水中に存在する薬剤耐性菌と、環境から検出される薬剤耐性菌に相互関係が示唆されることは、医療と環境における繋がりについて考える上で興味深い知見である。医療排水が環境に及ぼすインパクトについて評価を行うとともに、医療機関に適応可能な水処理技術の開発を試みていくことが有効な対策の1つになりうると考えられる。現在、環境中に流入する薬剤耐性菌の負荷影響を削減又は低減するために、医療機関に適応可能な排水処理システムの開発について、ラボスケールでのオゾン処理による基礎検討を開始している。これらの試験と流域における実態調査により得られた結果を踏まえ、医療機関に適応可能な新規排水処理システムの開発について検討を行うことが重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた予定通り、医療機関に由来する排水、下水処理場、河川における調査により得られた成果を基に、物質収支に基づいて医療機関が有する負荷影響と下水処理場の処理水が流入する河川への汚濁負荷影響の推定を行うことが出来た。また、病院排水を対象にラボスケールでのオゾン処理による排水処理実験の基礎検討を行い、高度水処理の有効性について検討を行うことが出来た。WHOにより緊急度が高い又は動向に注意を要するとされている薬剤耐性菌の環境へのインパクトと、不活化に有効な処理法について評価検討を実施出来たことは、医療機関に由来する薬剤耐性菌の環境への負荷低減を講じる上で重要な知見となりうると考えられる。以上の点から、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、研究計画の通りラボスケールでのオゾン処理による病院排水の処理実験を行うとともに、定量的微生物リスク評価(QMRA)手法を薬剤耐性菌へ応用し、感染リスクや障害調整生存年数(DALY)といったヒトの健康リスク評価を実施することで、医療機関に高度水処理を適応する対策技術を導入することによる環境リスク削減・低減対策の有効性についての検証と提言を試みる予定である。
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