本研究は,鋼構造に対する設計行為の明確化および合理化に繋げる鋼構造の設計体系の高度化を図るために,その設計手法が連続かつ統一的となることを目指し,鋼構造部材の使用条件範囲を区分,設定,限定しない統一的な安定性評価手法を構築することを目的としている.具体的には,(1)主要構造部の部材として 使用されていない薄い板厚の範囲における部材挙動およびその構造性能の解明,(2)鋼構造部材の軽量化,大断面化に伴う断面形状および補剛等を考慮した周辺 部材の簡略化,(3)現行規準,指針における仕様,使用範囲から逸脱している部材の詳細な部材性能評価であり,研究全体は5つのサブテーマから構成されている. 本年度は本研究課題の最終年度にあたるため,これまでの研究成果をまとめることを第一の目的にサブテーマ5)「新規安定性評価手法を踏まえた合理的設計手法の確立と展開」を実施した.なお,昨年度行ったサブテーマ4)についても部材断面形を追加した上で検討を継続し,H形断面部材の繰返し荷重に対する崩壊形式決定要因の解明および終局耐力評価法を検討した.また,当初より検討してきたサブテーマ1)-3)についても,改めて数値解析的手法,理論解析的手法を用いて検討,整理し,これまでの検討における不明確部分のさらなる解明や載荷実験検討範囲外領域への設計手法の拡張,展開を図り,薄板を積極的に使用した新たな設計式構築に向けた考え方を示した. 特に,これまでの成果を統合するサブテーマ5)を遂行する中で,新たな安定性評価手法を踏まえた合理的設計手法の基本概念を提案した.またサブテーマ3)「薄板H形断面部材の安定性評価の高度化と接合部への展開」,4)「冷間成形角形鋼管部材の連成座屈不安定挙動の解明」については,今後も引続き検討すべき課題を抽出し,座屈安定性を有効活用することの新たなる設計法に向けた研究課題の創出にも繋げた.
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