研究課題/領域番号 |
20H02295
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
横山 裕 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00231689)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 木造床 / 歩行振動 / 予測方法 / 居住性 / 評価方法 |
研究実績の概要 |
本研究は、S造やRC造建築物の床にも木造床にも共通に適用できる評価指標を提示するとともに、木造床の解析モデルを作成するために必要な知見を体系的に整備して、汎用性の高い予測手法を確立することにより、歩行振動からみた木造大スパン床の評価方法を確立することを目的とする。 近年採用例が増加している木造大スパン床では、歩行など床上での人間の動作により有感振動が発生し、居住性に悪影響をおよぼすことが懸念される。しかし、歩行振動に関する現行の評価規準は、S造やRC造建築物の床を対象としたものであり、性状が大きく異なる木造床に適用すると、実状よりも悪い評価となることが経験的に指摘されている。前年度は、木造床での歩行振動を再現した試料床検査と、コンクリートスラブを下地としたS造やRC造建築物床での歩行振動を再現した振動台検査を同一の検査員で実施し結果を比較することにより、木造床ではコンクリートスラブを下地とした床では発生しない変形の影響で、加速度波形が同様でも振動が小さく感じられることが定量的に確認できた。本年度は、前年度実施した試料床検査結果と検査試料とした歩行振動の関係を、変位波形を中心に詳細に検討した。その結果、歩行者が受振者近傍に着地した際に発生する局部的なたわみ変形が受振者の感覚,評価に大きく影響しており、変形が大きくなると加速度がマスクされ感じにくくなること、変形がさらに大きくなると変形そのものが感じられ振動感覚,評価に直接的に影響することを明らかにし、この要因を取り込んだ振動感覚,評価と対応する性能値を設定した。 つぎに、この性能値を設計段階で精度良く予測するための、木造床における歩行振動の予測解析方法を確立する目的で、申請者がこれまでに歩行振動測定を実施した複数の木造床を対象に、有限要素法による予測解析を試行し、部材の異方性や接合部の固定度などに関するいくつかの知見を集積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、木造床では変形により加速度がマスクされ振動が小さく感じられるメカニズムを把握し、この要因を取り入れた人間の振動感覚,評価と対応する性能値を設定することにより、木造床にもS造やRC造建築物の床にも共通に適用できる歩行振動の評価指標を確立することができた。また、この性能値を設計段階で精度良く予測するための、木造床における歩行振動の予測解析方法の検討に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
木造床における歩行振動の予測解析方法の確立に向けて、構法の異なる種々の木造床において歩行振動の測定と有限要素法による解析を繰り返し実施する。一連の検討を通して、部材の異方性や質量,剛性などの物性値のばらつき、さらには接合部の固定度など、木造床特有の要因について、振幅依存性や設計目的の違いに帰因する構造設計との相違点に着目しながら知見を体系的に整理,蓄積することにより、汎用性の高い予測手法を確立する。
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