研究課題/領域番号 |
20H02298
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大久保 孝昭 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (60185220)
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研究分担者 |
松本 慎也 近畿大学, 工学部, 准教授 (30325154)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 補修効果 / 持続性 / ひび割れ / 剥離 / 漏水 |
研究実績の概要 |
本研究は,RC造建築物の補修としてニーズが高い①ひび割れ補修,②剥落防止補修,③防水補修の3工法を対象として,補修効果の持続性を定量的に評価する技術を確立し,先導的なデータを蓄積する。具体的には,本研究は「各種補修工法の補修効果の持続性に関する評価方法の提案と実験データ蓄積,および実建築物で補修効果を計測する技術の提案と検証」という明確な目的を設定して検討を行う。また,本研究の特徴として,広島市に現存する被爆RC造建築物「被服支廠倉庫」の実証実験を実施することが挙げられる。 2021年度は,「①ひび割れ補修」に関しては,実験室レベルにおけるひび割れ挙動再現手法を確立し,ひび割れ注入工法とアクリル塗膜による壁面全面被覆工法の補修効果持続性を比較できた。2022年度はさらに多くの補修工法の比較を行う予定である。また,本課題では,ひび割れ補修効果を実現場で評価できる簡易試験方法も提案し,その実用化の見通しを得た。「②剥落防止補修」に関しては,打診検査による評価手法の高度化に取り組み,一定の成果を得た。また,常時モニタリング手法として,光ファイバ(FBG)を用いた剥離判定手法の提案を行い,実験室レベルで,温冷ムーブメントによる剥離の進行状況を明らかにすることができた。さらに被爆建築物(被服支廠倉庫)に生じている不同沈下による劣化を,常時微動で判断する技術の確立にも取り組んだ。「③防水補修」に関しては,アクリル系塗膜防水材を活用した外壁防水補修技術に取り組むとともに,被服支廠倉庫の予備調査では,防水補修工法の工事品質を高めるための漏水起点の検知技術の開発に取り組んだ。2022年度は防水と断熱性能向上を組み合わせた外壁・屋根補修工法を対象として,熱流センサを用いた評価技術について検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時に計画した内容通りに研究は進んでおり,2020~2021年度の研究としては順調な成果が得られた。研究計画に示した検討項目の進捗状況は下記の通りである。 ひび割れ補修工法選定のためのひび割れ挙動計測については,補修効果の持続性を評価できる簡易試験法の提案を行い,その実用化の見通しを得た。また,実験室レベルで,各種補修仕様を相互比較できる促進劣化試験を提案し,この成果はSCI英文ジャーナルに投稿し,2022年5月掲載(予定)で採択された。剥離防止補修工法選定のためには,まず,剥離発生を検知できる定期検査(打診試験)および常時モニタリング(光ファイバ)手法を提案し,その妥当性を検証した。後者に関しては国内査読付き論文に採択され,また前者に関しては2022年7月に掲載(予定)で査読付き論文に採択されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではここで対象とする補修工法の持続性に関して,実験室レベルでの補修模擬試験体を用いた実験と被服支廠倉庫での実証実験を並行して進め,学術的データの蓄積と実務に有益な汎用技術の開発を行う。 また,2022年度は本研究の最終年度であるため,学術論文や専門技術誌に成果を投稿する予定である。 ひび割れ補修に関しては,ひび割れ挙動の駆動力が補修効果の持続性に及ぼす影響を定量的に評価する技術を確立し,各種補修仕様を選定するための学術データを蓄積する。2022年度は実験室レベルで,ひび割れ注入工法に関する様々な補修仕様の相互比較を行い,ひび割れ挙動に応じた補修工法選定システムを提案する。また,2021年度に提案したひび割れ有害度の簡易評価試験手法のさらなる高度化にも取り組む。 剥落防止補修に関しては,2022年度は,これまでに提案した光ファイバ(FBG)を用いた剥離発生評価システムを用いて,剥離に対する耐久設計技術および補修工法の評価をおこなう。また2022年度も被爆建築物(被服支廠倉庫)において,常時微動計測を継続し,劣化の進行状況を微動で評価する技術の確立を目指す。 防水補修効果の持続性に関する研究では,屋根や外壁における防水補修に断熱性向上を付与した工法を対象として,補修仕様の評価手法を確立することに取り組む。具体的には熱流センサを用いて,漏水および断熱性の評価を行う基準の確立を目指す。成果は国際的に著名なジャーナルに投稿したいと考えている。
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