本研究は,RC造建築物の補修としてニーズが高い,①ひび割れ補修,②剥落防止補修,③防水補修の3工法を対象として,補修効果の持続性を定量的に評価する技術を確立し,先導的なデータを蓄積した。本来「補修効果の持続性」は補修工法選定の重要な要因であるが,現状では公的機関の維持保全指針等でも考慮されていない。具体的には,本研究は「各種補修工法の補修効果の持続性に関する評価方法の提案と実験データ蓄積,および実建築物で補修効果を計測する技術の提案と検証」という明確な目的を設定して検討を行った。また,本研究の特徴として,広島市に現存する被爆RC造建築物「被服支廠倉庫」の実証実験を実施したことが挙げられる。 「①ひび割れ補修」に関しては,実験室レベルにおけるひび割れ挙動再現手法を確立し,ひび割れ注入工法とアクリル塗膜による壁面全面被覆工法の補修効果持続性を比較できた。また,本課題では,ひび割れ補修効果を実現場で評価できる簡易試験方法も提案し,その実用化の見通しを得た。「②剥落防止補修」に関しては,打診検査による評価手法の高度化に取り組み,一定の成果を得た。また,常時モニタリング手法として,光ファイバ(FBG)を用いた剥離判定手法の提案を行い,実験室レベルで,温冷ムーブメントによる剥離の進行状況を明らかにすることができた。さらに被爆建築物(被服支廠倉庫)に生じている不同沈下による劣化を,常時微動で判断する技術の確立にも取り組んだ。「③防水補修」に関しては,アクリル系塗膜防水材を活用した外壁防水補修技術に取り組むとともに,被服支廠倉庫の予備調査では,防水補修工法の工事品質を高めるための漏水起点の検知技術の開発に取り組んだ。
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