研究実績の概要 |
本課題の 2 年目となる本年度は, 初年度計画の範囲で用意した試験体に対する曲げ試験の実施が到達目標であった. 新型コロナウィルス感染症拡大に伴うウッドショックの影響を受け, 時間的には大幅に遅れる結果となったが, 準備期間を長く設けたことで当初計画より十分な数量の試験体に対し, 曲げ試験を実施することができた. 本年度の計画上, 重要であった点は試験条件の検討と実大実験の実施であった. 特に試験体の調達遅れによる影響緩和のため, 追加の要素実験を計画していたが, 社会情勢の変化に伴う半導体不足の影響を受け, 当該試験の実施が困難となり, 結果として実大試験に画像解析を併用し, より詳細に破壊性状を捉える工夫を加えた. 再三の変更を余儀なくされた結果となったが, 一方で得られた試験結果は良好で, 当初の目標は達成され, さらに変更による予想以上の成果が得られたと考えている. 研究目的である人工乾燥に起因する木材内部の割れと共に, 同じく木材内部にある節等の欠点を CT スキャンの結果から事前に把握できていたため, それと実大試験の画像解析で得られた破壊性状との対応付けにより, 乾燥による内部の割れの影響に比して, 木材の成長の過程で内在してしまう欠点等の方が, 木材の靭性, すなわり曲げ強度に大きく影響することが明らかとなった. 部材剛性との対応関係やそれにおける不均質性の影響, 理論的な整理などは次年度以降も継続する必要があるが,実大試験としては必要十分な成果が得られたと判断している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症拡大, ならびにそれに伴う社会情勢の変化の影響を受け, 再三の変更に迫られたが, 結果的には当初計画に則した成果が得られたため, おおむね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画において, 次年度は解析的な検討に注力する計画であった. 一方, 半導体不足で断念した要素実験の結果がこれには不可欠で, 遅延してでもその実施を優先することを当初計画した. 一方, 画像解析を含めた実大実験の成功により, 力学的な解釈が予定より進められたため, 追加の予算を投じて従来の計画にこだわるよりも, 根本的な問題でえある木材内部の割れのメカニズムを解明する方が良いと判断した. 次年度は, それに必要な情報として乾燥過程における水分移動の調査に注力するを計画している.
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