研究成果の概要 |
建築物に用いる木材には乾燥処理が不可欠で, 短期間で工程を終える人工乾燥が今日では主流である. 人工乾燥は, 木材の内部に割れが生じ易い特徴を持つが, このような内部の割れが構造部材として期待される剛性・強度に如何なる影響を及ぼすかは明らかでない. 本研究はこの課題に対して, CT スキャンを利用して木材内部の情報を補完し, さらに実大曲げにおいて画像解析も併用することで, 内部の割れを含む木材の欠点が破壊現象に与える影響を調べたものである.検討の結果, 節等の不可避の欠点の方が割れより影響が大きいことが明らかとなった. またあわせて, 割れの要因となる木材中の水分移動も検討した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
木材は様々な力学的性質を持つ. 天然材料であるが故に成長環境に左右され, 完全に同一の個体がないことから, 予め強度・剛性を知ることが難しい. また同じ個体内でも位置により強度・剛性が異なる不均質性も併せ持つ. さらに, 木材内部の水分量, 厳密には結合水が力学的性質に影響を及ぼすことで知られ, これらの性質を勘案して安全に利用するために, これまでは統計的な手法を基にその強度体系を支えてきた. 一方, 近年多様化したその利用用途を勘案すれば, より詳細な検討が不可欠で, 本研究の学術的価値は, 可能な限り条件を絞りこみ, その強度・剛性の評価を試みた点にある.
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