研究課題/領域番号 |
20H02302
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
兼松 学 東京理科大学, 理工学部建築学科, 教授 (00312976)
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研究分担者 |
諸岡 聡 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (10534422)
西尾 悠平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (20793334)
向井 智久 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 主任研究員 (30318208)
宮津 裕次 東京理科大学, 理工学部建築学科, 講師 (70547091)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 鉄筋コンクリート / 付着 / 中性子回折法 / RESA / 非破壊測定 / 鉄筋応力 / 鉄筋ひずみ |
研究実績の概要 |
本年度は,以下の研究を実施した。 1. 鉄筋の形状が付着性能に及ぼす影響の把握:本研究項目では,鉄筋の形状が付着性能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,形状の異なる3水準の異形鉄筋を用い,引抜試験,および中性子回折法による鉄筋応力測定を行った。中性子回折法においては,日本原子力研究開発機構JRR-3のRESAを用いたが,測定方法に関する情報が不足していたため,本研究ではまず,測定時間と測定精度の関係を検討し,続いて表面形状の異なる異形鉄筋の付着性能評価を行った。その結果,以下の知見を得た。 (1)中性子回折法による鉄筋ひずみの測定精度は,観測される中性子の統計量に依存する。(2)観測される鉄筋応力の標準偏差は,測定時間とおおむね反比例の関係にあり,本研究で用いた試験体仕様の範囲においては,測定時間が20分より長くなると,応力の標準偏差は10 N/mm2以下となることを確認した。(3)(1)および(2)の結果を踏まえ表面形状の異なる異形鉄筋の付着応力について中性子回折法により検討を行った結果,節の間隔と高さの比(H/L)が支配的に影響を及ぼすこと,また一方で,τ-s曲線の概形については,H/Lに加えて異形鉄筋の表面形状も影響を及ぼすことを確認した。(4)鉄筋に自由端すべりが生じない条件下では,中性子回折法にて得られた鉄筋応力分布の概形は,表面形状に関わらず顕著な差異はみられなかった。(5)対して,鉄筋に自由端すべりが生じる条件下では,鉄筋の表面形状が付着性能に影響を及ぼすことが推察された。 2.FEMモデルの構築および最適な鉄筋の形状の探索(最適化技術の開発):(1)で得られた結果に基づき,FEM3次元解析の所要の構成則を検討するとともに対応する物性値を特定し,実験結果の再現を試みた。また,本研究の最終目的である鉄筋形状の最適化技術の開発に向けた予備検討を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、中性子回折法による実験を中心として実験的研究を行うことができた。 中性子回折法による実験では、本年度の実施項目であった、自由端すべりの生じない範囲において鉄筋の表面形状が鉄筋コンクリートの付着特性に及ぼす影響についての知見を得ることができ、完全非破壊で精度の高いベンチマークとなるデータを取得することができた。また、測定時間を調整することで測定プロトコルを整備できた点は、次年度以降の測定の効率化につながるポジティブな成果と考える。 また、自由端滑りが生じる応力範囲について、一般的な引張試験による検討を行い、表面形状が影響を与えることを特定できた点において、当初の検討範囲を超える成果を得ることができた。 その一方で、FEM解析の構築においては、構成則の決定および対応する物性値を特定を行い、中性子回折法によるデータを用いた検証を行っているが、一部でわずかに不整合な挙動を示しており、今後の検証とモデルの修正が必要であると考えている。 以上を考慮すると、おおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、引続き中性子回折法による表面形状が付着特性に与える影響を多角的に検討することを目的とし検討を進める。特に、付着に影響を与えず測定時間を大幅に減少させる(測定効率を上げる)検討を早期に行うことで、検討水準を増加することを試み、より広範な知見を得ることを試みる。 一方、FEM解析の高精度化を引続き検討し、形状最適化に資する分析が可能なモデル構築を速やかに完了させる。 また、自由な形状の鉄筋の開発を目標として、3Dプリンタを用いた試験体の検討を進め、当初の目標を達成するべく研究を推進する。
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