研究課題/領域番号 |
20H02304
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
松田 和浩 名城大学, 理工学部, 准教授 (80567397)
|
研究分担者 |
坂田 弘安 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (80205749)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 木質高層建物 / ダンパー / CLT / 時刻歴応答解析 / 等価線形化手法 / ロッキング |
研究実績の概要 |
木質高層建物の実現とその普及への期待が世界的に高まっている。しかし、木質建物の復元力特性は、スリップ型となることが多く、また、エネルギー吸収性能も低いことがわかっている。地震国である日本で、木質高層建物の耐震性を向上させることは重要である。その耐震性を効率的に向上させる手段として、ロッキング機構と各種ダンパーを併用することを提案する。ロッキング機構を適用することで、原点指向型の復元力特性を建物に付与し、かつダンパーを適用することで、建物の剛性とエネルギー吸収性能を高めるのが本提案のコンセプトである。近年急速に利用が拡大しているCLTによる木質建物を研究対象とし、建物規模は4~10層程度の高層建物を想定する。 2021年度にCLTロッキング架構の部分架構実験を行い、実験結果の分析、CLTフレームモデルの構築と解析検討をする予定であったが、CLTロッキング架構における柱脚支持部の挙動評価を行う上で、柱脚部のめり込み性状を詳細に把握するための要素試験を実施する必要性が判明したため、予定を変更して先に要素試験を実施した。要素試験の結果を整理し、柱脚部を詳細にモデル化した上で、CLTロッキング架構における柱脚支持部の挙動を再評価した。 上述した成果を用いて提案するCLTロッキング建物の一部を取り出した部分架構に対して強制変形を与える実験を実施し、試験体の力学挙動を詳細に把握した。また、その試験体を再現するフレームモデルを作成した。フレームモデルは改善すべき点が含まれているものの、実験結果を概ね再現することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己点検による評価では「(3)やや遅れている。」と判断する。以下にその理由について述べる。 2021年度にCLTロッキング架構の部分架構実験を行い、実験結果の分析、CLTフレームモデルの構築と解析検討を行う予定であったが、先に要素試験を実施し、上述した実験等は2022年度に行うよう予定を変更した。また、その方針変更のために、実験結果の分析期間が延び、研究費の繰越申請も行った。 当初予定から実験計画が変更になったものの、代わりに行った要素実験により、柱脚部のめり込み性状を詳細に把握できるなど、重要な成果が多く得られている。その研究成果は日本建築学会の大会学術講演や、東海支部の研究集会、日本地震工学会の大会学術講演などで発表した。また、査読付き論文として日本建築学会・土木学会の構造工学論文集に研究成果が掲載され、達成度としては問題ない範囲と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は以下の3つを行う。なお、①と②は当初は前年度に実施予定であったが、前年度はCLTロッキング架構における2層部分架構の挙動を評価する際に、追加で壁柱一般部の圧縮実験が必要となったことから研究計画を変更し、前年度の予算を一部繰り越した上で本年度に実施するものである。 ①CLTロッキング架構における2層部分架構の強制変形実験 CLTロッキングフレームによる2層分の1層1スパン試験体を作製し、強制変形実験を行う。上下階の層せん断力の伝達について把握する。 ②CLT2層架構のフレームモデルの構築 CLTロッキング架構やダンパーを設置した場合のCLT建物の地震挙動を把握するために、フレームモデルを作成する。一般的な架構部分については、既往文献を参考にして作成し、提案するロッキング架構部分については、本研究で実施した実験をもとに作成する。実験との比較によりフレームモデルの精度を検証する。 ③フレームモデルを用いた各種検討 作成したフレームモデルを用いて、一般耐震架構とロッキング架構の割合を変化させた場合、ダンパーの種類を変えた場合など解析検討を実施し、提案架構の効果を検証する。 最後に、本研究課題の4年間で得られた知見を総括するとともに、その成果を建築関連の主要論文誌に投稿する。
|