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2020 年度 実績報告書

中高層木質構造物における高軸力を受ける柱脚接合部の汎用設計法の提案

研究課題

研究課題/領域番号 20H02305
研究機関国立研究開発法人建築研究所

研究代表者

山崎 義弘  国立研究開発法人建築研究所, 材料研究グループ, 主任研究員 (70644425)

研究分担者 秋山 信彦  国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 主任研究官 (20806054)
松田 和浩  名城大学, 理工学部, 准教授 (80567397)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード中高層木造 / 柱脚 / 支圧強度 / CLT / 集成材
研究実績の概要

地球環境問題対策の最重要テーマであるCO2削減に対し、木材利用による炭素固定化が期待されており、中高層建築物への木材利用が一つの鍵となる。しかし、中高層化にともなって柱が負担する軸力が増加し、断面が大きくなると、現状の知見のみでは予期していない破壊形式が生じ得る。大規模木造建築物を設計するための法整備は整いつつあるが、個々の接合部の性能評価法、および地震時の安全性の確認方法は指針類にも示されてなく、よって本研究では、この新しい技術領域での汎用設計法の開発を行う。なお、現状では主に耐震および耐火の両面での法規制の解決が課題であるが、本研究はこのうち耐震面での課題を対象としている。
研究対象とする柱脚接合部、および壁脚部接合部では、引きボルト、ドリフトピン、ラグスクリューボルト、GIR、ビスなど、様々な接合具を用いて接合部が構成されるが、個々の接合具の性能評価は既に指針類にまとめられているためここでは深堀せず、本研究では接合部としての終局耐力や変形性能を担保するために保証しなければならない木材の破壊防止に注力する。具体的には、集成材やCLTなど中高層木造建築物に用いられる木質材料を対象に、木口面や木口面以外において、様々な寸法・境界条件下で局部圧縮を受けるときの支圧特性を体系的に把握し、これに基づき、中高層化により増大する軸力と同時に曲げモーメントを受ける、過酷な条件下にある柱脚接合部の汎用設計法を提案する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

軸力下での曲げ耐力の傾向を示す有効な設計図表としてM-N相関関係がある。これまでに実施した実験により、引きボルト式集成材柱脚部のM-N相関関係において、特に高圧縮力下では木口面の支圧強度の適切な評価が重要であることを確認した。具体的には、木口面の支圧強度を実態より低めに評価すると破壊モードを見誤る可能性があること、および繰り返し載荷を受けたときに母材切り欠き部から脆性破壊する可能性があること、の二点が実験により明らかとなった。なお、このことは引きボルト式集成材柱脚部で確認されたことであるが、アンカーボルトを降伏させるタイプのCLT壁脚部についても同様の可能性をはらんでいると考えられる。
一般に設計実務に用いられる材料強度は、流通材の実態強度に比べてかなりの安全が見込まれているため、設計値と実態値の乖離の程度を把握しておく必要がある。また、圧縮強度に至らないまでも比例限応力度(圧縮強度の70%程度と言われている)を超える圧縮応力経験後には、引張強度が顕著に低下する現象も確認している。このことは、木質構造分野においてこれまで考慮されなかった現象であり、知見もないため、早急に対応すべき新たな検討課題として位置づける。
このように、まずは現状の知見の中で補完すべき課題を整理した。当初予想していなかった重要な課題も新たに発見でき、これについても本研究のアプローチである、「材料強度を適切に定め、保証設計の方法を確立する」の中で対応可能であるため、当初の計画以上に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

昨年度の成果を踏まえ、本年度は次に述べる二つの検討課題に対応する。
一つ目は、圧縮応力経験後の引張強度の低下についてであり、初期圧縮応力度の水準をパラメータとして実験を行う。特に引きボルト接合部において生じ得る現象であることから、材料試験とともに現実的な引きボルト接合部の実験および数値解析も実施する。
二つ目は、様々な軸力・曲げモーメントのバランスを考慮した集成材柱脚部・CLT壁脚部の繰り返し載荷挙動についてである。10層程度の木造建築物では、大地震時に1000kN程度の引き抜き力が1階柱脚部に生じるという計算例が示されている。当初の研究計画では、2年目に振動台実験等を行うことで繰り返し挙動を調査する予定であったが、これを一部変更し、一つ目の課題、および上記の計算例の知見に基づき、接合部レベルの静的繰り返し載荷実験を実施することとした。なお、研究代表者の所属機関において、新たな載荷装置(鉛直荷重±1000kN, 水平荷重±300kN)が導入される予定となったことも、計画の一部変更の後押しとなった。
最終的には、母材破壊を制御し、接合部破壊へと促すための設計法・評価法を提案する。評価法の骨子となる力学モデルや理論は既往のもので十分に堪えることを確認しており、あとは接合部内の切り欠き部など細部での破壊強度設定法の検討に注力する。昨年度の実験データに加え、上記二つ目の課題の実験データを用いてこれを行う。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] PROPOSAL OF HYSTERESIS MODEL OF TIMBER SHEAR WALLS CONSIDERING FATIGUE BEHAVIOR AND APPLICATION TO EQUIVALENT LINEARIZATION TECHNIQUE2021

    • 著者名/発表者名
      YAMAZAKI Yoshihiro、NAKANISHI Satori、SAKATA Hiroyasu
    • 雑誌名

      Journal of Structural and Construction Engineering (Transactions of AIJ)

      巻: 86 ページ: 425~435

    • DOI

      10.3130/aijs.86.425

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] EVALUATION OF PERFORMANCE DETERIORATION OF PLYWOOD SHEATHING WALL SUBJECTED TO REPEATED CYCLIC LOADING2021

    • 著者名/発表者名
      YAMAZAKI Yoshihiro、SUZUKI Koya、MATSUDA Kazuhiro、SAKATA Hiroyasu
    • 雑誌名

      AIJ Journal of Technology and Design

      巻: 27 ページ: 202~206

    • DOI

      10.3130/aijt.27.202

    • 査読あり
  • [雑誌論文] CYCLIC LOADING TEST OF CLT-STEEL HYBRID STRUCTURE FRAME WITH CONNECTIONS TO IMPROVE HYSTERETIC BEHAVIOR2021

    • 著者名/発表者名
      MIKI Norihito、NAKASHIMA Shoichi、YAMAZAKI Yoshihiro、ISHIHARA Tadashi
    • 雑誌名

      AIJ Journal of Technology and Design

      巻: 27 ページ: 213~218

    • DOI

      10.3130/aijt.27.213

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Strength and energy dissipation of timber shear walls subjected to arbitrary deformation history study on fatigue behavior of timber structures subjected to repeated earthquake motions: Part 12020

    • 著者名/発表者名
      Yamazaki Yoshihiro、Kanda Kengo、Sakata Hiroyasu
    • 雑誌名

      JAPAN ARCHITECTURAL REVIEW

      巻: 3 ページ: 518~528

    • DOI

      10.1002/2475-8876.12178

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 引きボルト式集成材ラーメン構造の耐震設計法に関する研究 その3:柱脚接合部の定軸力下における曲げ性能の実験検証2020

    • 著者名/発表者名
      槌本敬大, 秋山信彦, 岡本滋史, 山崎義弘
    • 学会等名
      日本建築学会大会学術講演(関東)
  • [学会発表] 引きボルト式集成材ラーメン構造の耐震設計法に関する研究 その4:柱脚接合部の圧縮側木口面と引張ボルトの定着座金部の面圧挙動の実態性能の把握2020

    • 著者名/発表者名
      岡本滋史, 秋山信彦, 槌本敬大, 山崎義弘
    • 学会等名
      日本建築学会大会学術講演(関東)
  • [学会発表] 引きボルト式集成材ラーメン構造の耐震設計法に関する研究 その5:繊維方向めり込み特性の評価方法の検討2020

    • 著者名/発表者名
      山崎義弘, 秋山信彦, 岡本滋史, 槌本敬大
    • 学会等名
      日本建築学会大会学術講演(関東)
  • [学会発表] 引きボルト式集成材ラーメン構造の耐震設計法に関する研究 その6:柱脚接合部に関する一定軸力を考慮した降伏耐力・終局耐力の推定法の提案2020

    • 著者名/発表者名
      秋山信彦, 岡本滋史, 槌本敬大, 山崎義弘
    • 学会等名
      日本建築学会大会学術講演(関東)
  • [学会発表] 繰り返し載荷による耐力劣化を表現し得る木造耐力壁復元力モデルの提案とその応用 その 1:提案モデルの概要2020

    • 著者名/発表者名
      小林望, 中西理, 山崎義弘, 坂田弘安
    • 学会等名
      日本建築学会大会学術講演(関東)
  • [学会発表] 繰り返し載荷による耐力劣化を表現し得る木造耐力壁復元力モデルの提案とその応用 その 2:実験に対する精度検証2020

    • 著者名/発表者名
      藤岡諒太郎, 中西理, 山崎義弘, 坂田弘安
    • 学会等名
      日本建築学会大会学術講演(関東)
  • [学会発表] 繰り返し載荷による耐力劣化を表現し得る木造耐力壁復元力モデルの提案とその応用 その 3:等価線形化手法への応用2020

    • 著者名/発表者名
      中西理, 山崎義弘, 坂田弘安
    • 学会等名
      日本建築学会大会学術講演(関東)

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公開日: 2021-12-27  

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