研究課題/領域番号 |
20H02306
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柏 尚稔 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (40550132)
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研究分担者 |
石原 直 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 室長 (50370747)
大村 早紀 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 研究員 (70848283)
中川 博人 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 研究員 (80713007)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 建築構造 / 基礎構造 / 地盤工学 / 既存杭 / 直接基礎 |
研究実績の概要 |
都市の再生の機運が高まっている中において、建物の建替えを計画する際には既存杭の処理が大きな問題となる。しかし、既存杭を有用物として捉えて再利用することができれば、環境負荷の問題に対して多大な貢献が可能となる。さらに、既存杭を含む敷地地盤に対する適切な補強により地盤の支持力を高めて、新築建物の基礎形式を直接基礎として設計できれば、浮き上がり挙動など建物の損傷低減に繋がる現象を利用して、極大地震に対してレジリエントな建物の設計機構を実現することも可能と考えられる。本研究課題では、既存杭と地盤の両方が安定的な支持力を発揮できる複合地盤の設計法を示すとともに、複合地盤上の建物の巨大地震に対するレジリエンスの評価手法を提案することを目的としている。今年度の成果は次の通りである。 ・重力場における振動台実験を実施し、直接基礎建物の地震時挙動の基本データを収集した。実験では模型地盤として砂質土の1層地盤に加えて、軟弱な粘性土と砂質土の2層地盤も対象とした。地中の杭の有無をパラメータとした。 ・模型地盤を軟弱な粘性土と砂質土の2層地盤とした場合、砂質土の1層地盤に比べて直接基礎に対する極限支持力が小さいことから、地震時の直接基礎建物の回転挙動が卓越し、大きな地盤変状と共に地震後には建物に大きな残留傾斜量が生じた。 ・地中に建物に対する支持性能が十分である杭が存在する場合、杭と直接基礎建物が接合されていない条件であっても、建物の鉛直荷重が杭に伝達し、杭が建物の支持に寄与することが分かった。 ・さらに、模型地盤を軟弱な粘性土と砂質土の2層地盤とした場合であっても、地中に杭が存在する場合には杭が建物の支持に寄与し、直接基礎建物の地震時の回転挙動と地震後の残留傾斜量を大きく低減できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、模型振動実験と有限要素法を用いたシミュレーション解析を通じて、(課題①)建物の浮き上がり挙動など大地震時特有の非線形挙動を含めて直接基礎建物の地震応答性状を把握すると共に、地盤-建物連成系の地震応答評価するに当たって考慮すべき影響因子を抽出すること、(課題②)直接基礎建物の機能継続性を担保するために必要な複合地盤の耐震性能を明確にし、設計での評価指標とモデル化手法を明らかにすること、の2段階で推進することを計画している。 このうち、2020年度は課題①を実施した。課題①では重力場における模型実験により、砂質土だけなく粘性土を含む実験を実施し、有意な実験結果を得た。一方、遠心載荷実験を合わせて計画していたが、準備段階に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は以下のA)、B)を実施する予定である。 A) 直接基礎建物を支持するための複合地盤の要求性能とともに、効果的な複合地盤の構築法を検討する。複合地盤の要求性能の検討においては、3次元FEM解析などの解析的な検討を軸として、既存杭(杭径や杭体の健全性)、敷地地盤(砂質土や軟弱粘性土)および補強材(地盤改良や杭体補強)を解析変数として常時および地震時の直接基礎建物の沈下・傾斜量に着目したパラメトリックスタディを実施する。 B) 効果的な複合地盤の構築法に対する検討においては、固定土槽およびせん断土槽を用いた遠心場もしくは重力場の模型実験を軸とする。固定土槽を用いる実験では、建物の基礎版に作用する鉛直荷重を直接的に計測することによって、地震時の建物の転倒モーメントに対する地盤抵抗性状を把握し、複合地盤として直接基礎建物を支持できる機構を検討するための実証データを収集する。せん断土槽を用いる実験では、建物基礎版の埋込みを考慮し、地震時における直接基礎建物の鉛直荷重を既存杭に効率的に負担させる機構を検討する。さらに、基礎版に作用する鉛直・水平力を直接的に計測することによって、埋め込みの効果を検討できる実証データを収集する。
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