2022年度は、2021年度に引き続き、本研究で開発した飛び火延焼モデルを組み込んだCFDベースの火災延焼シミュレーションモデルによる木造密集市街地の火災延焼予測のケーススタディを中心に研究を実施した。本研究で対象とする木造密集市街地火災は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震のような巨大地震時に発生が危惧される火災を想定している。地震時を想定しているため、シミュレーション対象とする木造密集市街地において、地震による建物倒壊を新たに組み込んだ。地震によりどの建物が倒壊するかや、倒壊後の建物形状に関しては、本来、地震動シミュレーションとの連成を始めとした詳細な検討が必要と考えられる。ただし、本研究では、建物倒壊については、火災発生原因建物とその風下側建物(ただし、火災発生原因建物に隣接する一棟のみ)の倒壊の組み合わせの検討、倒壊後の建物形状については、建物高さが半減し、水平方向に建物専有部分が拡大する簡易モデルの導入を行った。 本ケーススタディを通じて、火災発生原因建物の風下側建物のみが倒壊する場合には、建物の倒壊なしの場合と火災延焼性状が類似(主流風下方向に細長く延焼)する一方、火災発生原因建物が倒壊する場合には、主流横断方向にも延焼が拡大していく傾向が確認された。飛び火に伴う延焼に関しては、建物倒壊なしの場合と建物倒壊あり(火災発生原因建物の倒壊もしくはその風上側建物の倒壊)の場合で顕著な差は見られなかった。
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