研究課題/領域番号 |
20H02311
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 知広 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90580952)
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研究分担者 |
崔 ナレ 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10826481)
小林 典彰 大阪大学, 工学研究科, 技術職員 (60880656)
山中 俊夫 大阪大学, 工学研究科, 教授 (80182575)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 通風 / CFD / LES / 領域分割 / 風洞実験 |
研究実績の概要 |
本研究は今後利用増加が期待されるCFD技術のLarge Eddy Simulation(LES)を前提とし、室内気流解析での自然換気・通風時の境界条件設定の難しさを克服し、 室内のみを解析領域としたLESで実際の環境を高精度かつ適切に再現し得る実用的な室内気流予測法としての「LES領域分割法」を確立し、学術的・技術的なブレイクスルーを目指すものである。初年度となるR.2年度にはLESの精度検証のための風洞実験を多く実施するとともに、単室を対象に開口に直交する外部風向条件に着目してLES領域分割法が全域計算を概ね再現可能なことを示した。 前年度の成果を受け、2年度目となるR.3年度には通常のRANS解析では適切に予測が不可能で当該手法が最も有効となる「風圧係数差が微小となる条件」として対面開口で風向が開口に対して平行となる風向条件と、開口に対して斜め方向にアプローチする外部風向条件についてLES領域分割法の適用可能性の検証を行なった。これにより、開口に対して直交、平行、斜めの3つの風向条件を対象に検証し、提案する領域分割法のアルゴリズムについても精度に応じてMethod1からMethod3までの3種類の検証を行った。 得られた知見として、開口の流量係数と流入風向の両者を補正するMethod1では若干手法は煩雑ではあるがどの風向でも精度良く再現ができ、流入風向のみを補正するMethod2では開口に並行な風向で若干風量は過大評価するものの傾向は良く一致、両者ともに補正しないMethod3では定性的な傾向も再現が不可能であることを示された。 上記に加え、Method1の初期段階に必要となる屋外のみの気流解析をLESでなく簡易なRANSとする手法もMethod4として提案の上で検討を行った。この結果、開口に対して直交または斜め風向では精度良く適用可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書での当初計画では初年度には屋外気流と換気量の真値を取得するための風洞実験に重点を置き、初年度及び2年目以降にLES領域分割法の検証を予定していた。本研究では初年度には上記の風洞実験を終え、開口に直行する風向条件でのLES領域分割法の検証を実施しており、2年目には異なる2風向を加えて検証を行った。また、提案するLES領域分割法のアルゴリズムについても、当初計画では2年目以降に当該手法で必要となる屋外のLES解析をRANSで代替する手法の検討を予定していたが、これをMethod4として2年度目であるR.3年度に実施することができた。このため、概ね申請書に記した当初計画通りにしているものと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では基礎研究としての通風解析の方法論に着目して等温気流場のみを対象にLES領域分割法の検証を実施することを予定しており、今後は複数3つ以上の開口条件や間仕切りを有するような条件での検証を行う。また、研究を進めるにあたり、実学への応用を考えた際には外部風による風圧差を駆動力とする通風のみならず内外温度差による浮力の駆動力も同時に取り扱うことができると当該手法の適用幅が広がり有用性が一層高まると思われるようになった。このため、対象とする形状は簡易的かつ一般性の高いものとしながらも、内外温度差がある条件で浮力も含めたLES領域分割法の提案の可否についても視野に入れて研究を推進していきたいと考える。
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