研究課題/領域番号 |
20H02318
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
森 傑 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80333631)
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研究分担者 |
栗山 尚子 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (00362757)
野村 理恵 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20599104)
池添 純子 徳島文理大学, 人間生活学部, 准教授 (50515624)
畠山 雄豪 東北工業大学, ライフデザイン学部, 准教授 (90613852)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コミュニティ移転 / 環境移行 / 再定住 / 災害 / 気候変動 |
研究実績の概要 |
東日本大震災の復興においてコミュニティ移転の具体的な手法として活用された防災集団移転促進事業は、必ずしも再定住手法としての評価は定まっていない。コミュニティ移転の計画や人々の生活がおかれる実状は、大災害・気候変動・開発などの移転の起因となる状況によって大きく性質が異なる。コミュニティ移転を検討せざるを得ない喫緊のグローバルな問題に対して、本研究は、A.東日本大震災での集団移転による居住環境形成の俯瞰的把握、B.南海トラフ地震対策としての予防移転の社会・制度・空間的課題の分析、C.DDR・DFDR・CCDRの環境移行特性の比較分析、D.コミュニティ移転による生活圏再構築のアクションリサーチによる実地検証により、人々の自立的・持続的な再定住を実現する次世代計画論の探求を探求する。 3年間の実施計画として、AからDの課題群に対して以下の7項目を遂行する。2020年度は主として課題AおよびBに重点を置き、(1)(2)(4)に取り組んだ。(1)住宅再建事業手法の組み合わせと移転現況の類型的整理、(2)移転前後の生活環境の地理空間的変化と生活実態の分析、(3)事前復興まちづくりにおける予防移転の模索実態の追跡調査、(4)アジア太平洋地域のFDRの歴史的・学術的レビュー、(5)パイロット的FDRにみる移転者の環境適応プロセスの分析、(6)新天地での持続的再定住へ向けてのアクションリサーチ、(7)環境移行特性にからみコミュニティ移転の既存計画論の空間的・制度的限界の考察
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年度に予定していたフィールド調査が実施できなかった。 (1)住宅再建事業手法の組み合わせと移転現況の類型的整理/東日本大震災では、防集事業だけでなく、区画整理や災害公営住宅などの事業手法が組み合わされ、災害危険区域外で住宅が再建されてきた。住宅整備における事業組み合わせ手法および整備計画の計画変更とその要因の分析し、それらの事業手法の組み合わせの結果としての移転現況を空間構造的に捉えた。 (2)移転前後の生活環境の地理空間的変化と生活実態の分析/住宅再建の俯瞰的な動向把握と連動して、例えば人口集中エリアや公共交通機関、商業、医療、公共施設等との関係からみた移転前後の地理空間的な変化について、移転前後での隣近所や近隣地域との交流や社会的な繋がりの変化、移転前後の通学、通勤、通院などの具体的な生活の仕方の変化の分析を行った。 (4)アジア太平洋地域のFDRの歴史的・学術的レビュー/20世紀においてダム建設に関連して移転を強いられた人々は4,000万~8,000万ともいわれ、2011~2020年の10年間で最大25,000万人が土地と住宅の喪失とともに、生活基盤や職を失うリスクを負っているとの指摘がある。DDR・DFDR・CCDRそれぞれの環境移行における諸問題の特徴を、学術的資料の蓄積が多い事例に着目し、社会背景・歴史的文脈と照らし合わせながら体系的なレビューを行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は課題BおよびDに重点を置き、過年度の成果を相互関連的に整理するとともに、特に(3)(6)を中心的に取り組む。 (3)事前復興まちづくりにおける予防移転の模索実態の追跡調査/将来の南海トラフ地震により深刻な津波被害が予想される静岡県沼津市内浦重須地区は、2012年7月から研究代表者を講師に招き、東日本大震災を機に全国ではじめて自治会として被災前の集団移転の検討を行い、2016年3月には静岡県による移転希望者向けの宅地整備の方針が公表された。これらの実験的事例から浮き彫りとなりつつある、現行の防災集団移転促進事業の社会・制度・空間的な特性と予防移転への適応における諸課題を分析する。 (6)新天地での持続的再定住へ向けてのアクションリサーチ/宮城県気仙沼市小泉地区の集団移転は、協議会型における合意形成や意思決定、住民主導による復興まちづくりの模範的な事例として、国内外から大きく注目されてきた。研究代表者はコミュニティ・アーキテクトとして継続的に支援してきており、2016年10月時点で集団移転による住宅再建が100%完了した。また、被災者の移転の時点では17区画の空きが生じていたが、一般分譲が開始されて以降、2018年6月時点で3戸、2019年3月時点でさらに4戸が建設され、その世帯の全てが小泉地区外からの転入であった。被災地の多くで過疎化が加速する中、転入者による新陳代謝と次世代によるコミュニティの持続が期待されている。再定住の具体的な支援活動に取り組みつつ、タイムリーかつリアルなレビューに取り組む。
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