研究課題/領域番号 |
20H02332
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高取 千佳 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (10736078)
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研究分担者 |
田代 喬 名古屋大学, 減災連携研究センター, ライフライン地盤防災産学協同研究部門特任教授 (30391618)
飯塚 悟 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40356407)
森山 雅雄 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (00240911)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グリーンインフラ / 流域レジリエンス / 雨水浸透・貯留・流出抑制機能 / 人口縮退 / 緑地管理システム |
研究実績の概要 |
名古屋・福岡都市圏において、地形・地質・水系に関する基盤データを整備した上で、地質構造と地形特性に基づき、流域分類をGIS上において行った。こうして分類した両都市圏の流域の内、異なる地形(洪積台地・沖積低地等)に位置する流域で、特に豪雨被害のあった流域(福岡県筑後川流域)や、広大なゼロメートル地帯を有する流域(愛知県木曽川流域等)を研究対象として複数選択した。次に、対象流域内において、土地利用・植生・衛星画像の経年データを構築・活用し、人工林・二次林・農地・草地・裸地・芝地・市街地の緑地・公園・グラウンド等の詳細な緑地類型を行った。具体的には、環境省自然環境保全基礎調査による2万5千分の1植生データを元に、国土数値情報土地利用細分メッシュデータ、国土地理院基盤地図情報、各自治体による都市計画基礎調査や緑の実態調査、衛星画像データを活用して、2500分の1スケールにおいて緑地類型を行った。 次に、緑地の質的データとして、LiDARデータを活用し、対象流域における高解像度三次元土地被覆データ(年・季節別)を整備した。一方で、対象流域における緑地類型別に関係する管理主体(行政・企業・NPO・市民・地域住民・ボランティア等)を網羅的に把握・整理し、統計資料・大規模アンケート・ヒアリング調査を実施し、応募者が新たに開発した指標である「管理作業密度=対象とする緑地に対し、年間で単位面積あたりに投下される管理作業時間 (h/a)」を活用して、緑地の管理作業密度をGISデータとして整備した。こうして構築した緑地類型別の三次元構造の年間変化についてのデータも整備し、管理作業密度の高低(管理レベル)について、相関分析を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、緑地類型別に関係する管理主体(行政・企業・NPO・市民・地域住民・ボランティア等)を網羅的に把握・整理し、統計資料・大規模アンケート・ヒアリング調査について、実施が難しくなる期間が長くなり、結果として緑地の管理作業量の把握・算出が遅れている。一方で、緑地管理に関する統計資料・大規模アンケート調査を活用し、標準的な管理主体1人当たりの「管理作業量=年間で対象とする緑地に対し投下可能な管理作業時間 (h)」の算出は可能となった。さらに、ヒアリング、現地実測調査により、機械(例:大型トラクター等)や先進技術(例:ロボット草刈り機等)による管理作業量の削減効果についても算出を行い、統合的データベースは構築は完了した。
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今後の研究の推進方策 |
緑地の管理状況については、衛星画像(Sentinel-1,2、光学センサ・合成開口レーダ)を活用し、年間の管理状況の変化の類型化が可能となった。今後、管理作業量の大規模アンケートデータとの比較を行うことで、緑地管理システムの構築を行う。さらに、指標化を行った緑地類型別・管理レベルごとに、雨水浸透・貯留・流出抑制機能の大規模実測評価を行う。具体的には、緑地類型別・管理レベルごとに調査対象地を選定し、実測装置の設置・実測を行い、異なる降雨強度に対する雨水浸透・貯留・流出抑制機能の網羅的データを整備する。次に、緑地類型別・管理レベルごとの雨水浸透・貯留・流出抑制機能の実測値を反映した氾濫シミュレーションを行う。具体的には、内外水複合氾濫モデルのベースモデルとして、MVH Soft社が開発した「InfoWorks ICM」を採用し、観測された降雨を基に作成される確率降雨を入力データとして、樹幹遮断や地表面上のくぼ地貯留による初期喪失分を除いた後、地表面流出量計算過程で、地中へ浸透させる量(雨水浸透量)と地表面上に流出し下水管に流れ込む量(地表面流出量)の算定を行う。その算定に当たり、緑地による浸透面に対して、先に実測調査により明らかとした最終浸透能を用いたホートン式により雨水浸透量を計算し、浸透できない余剰降雨を地表面流出量として算定する。さらに、これにより得られたシミュレーション結果と、過去の氾濫実績(九州北部豪雨・東海豪雨)との比較によるシミュレーションの精度検証を行う。
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