研究課題/領域番号 |
20H02332
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高取 千佳 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (10736078)
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研究分担者 |
田代 喬 名古屋大学, 減災連携研究センター, ライフライン地盤防災産学協同研究部門特任教授 (30391618)
飯塚 悟 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40356407)
森山 雅雄 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (00240911)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グリーンインフラ / 流域レジリエンス / 雨水浸透・貯留・流出抑制機能 / 人口縮退 / 緑地管理システム |
研究実績の概要 |
名古屋・福岡都市圏において、緑地管理に関する統計資料・大規模アンケート・ヒアリング調査を活用し、標準的な管理主体1人当たりの「管理作業量=年間で対象とする緑地に対し投下可能な管理作業時間 (h)」の算出を行った。また、ヒアリング、現地実測調査により、機械(例:大型トラクター等)や先進技術(例:ロボット草刈り機等)による管理作業量の削減効果についても算出を行った。次に、緑地類型別ごとの雨水浸透・貯留・流出抑制機能の実測値を反映した氾濫シミュレーションを行った。具体的には、内外水複合氾濫モデルのベースモデルとして、MVH Soft社が開発した「InfoWorks ICM」を採用し、名古屋都市圏木曽川流域における津島市を対象とし、観測された降雨を基に作成される確率降雨を入力データとして、樹幹遮断や地表面上のくぼ地貯留による初期喪失分を除いた後、地表面流出量計算過程で、地中へ浸透させる量(雨水浸透量)と地表面上に流出し下水管に流れ込む量(地表面流出量)の算定を行った。その算定に当たり、緑地による浸透面に対して、先に実測調査により明らかとした最終浸透能を用いたホートン式により雨水浸透量を計算し、浸透できない余剰降雨を地表面流出量として算定する。さらに、これにより得られたシミュレーション結果と、過去の氾濫実績(九州北部豪雨・東海豪雨)との比較によるシミュレーションの精度検証を行った。また、福岡都市圏・那珂川流域を対象に、RRIモデルを活用して、マクロスケールにおける雨水浸透・流出シミュレーションを試験的に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
指標化を行った緑地類型別・管理レベルごとに、雨水浸透・貯留・流出抑制機能の大規模実測評価を行う必要があるが、実測装置の測定条件の整理に時間を必要とし、本年度は試験的に、散水式雨水浸透装置のグラウンドにおける実測、ミニディスクインフィルトロメーターにおよる耕作放棄地における実測にとどまっている。次年度、大規模実測を行うことで、緑地の管理状況別の測定値の集積を行う必要がある。具体的には、緑地類型別・管理レベルごとに調査対象地を選定し、実測装置の設置・実測を行い、異なる降雨強度に対する雨水浸透・貯留・流出抑制機能の網羅的データを整備する必要がある。また、コロナ禍が続き、福岡都市圏・久留米市内、また名古屋都市圏、櫛田川流域における現地ヒアリング調査を何度か断念せざるを得ない状況が出ており、現地に入れる回数が減少した。得られたデータについては、オンラインアンケートと合わせて整備が進み、2022年度にかけて論文投稿を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、整備した緑地類型別・管理レベルごとに、雨水浸透・貯留・流出抑制機能の大規模実測評価を行う。具体的には、緑地類型別・管理レベルごとに調査対象地を選定し、実測装置の設置・実測を行い、異なる降雨強度に対する雨水浸透・貯留・流出抑制機能の網羅的データを整備する。 さらに、コーホート分析を用いて2040年と2050年の人口予測を行い、男女別・年齢構成別に流域単位の人口データを整備する。次に、標準的な管理主体1人当たりの「管理作業量=年間で対象とする緑地に対し投下可能な管理作業時間 (h)」を活用し、将来人口予測と掛け合わせることにより、将来の緑地類型別に投下可能な管理作業量を算出し、緑地類型別・管理レベルの予測評価を行う。さらに、氾濫シミュレーションモデルを活用し、将来の流域の豪雨時の脆弱性評価を行う。この評価結果に対し、将来管理コストが縮減する中で、管理コストの効果的・適正な配分を行うことで、緑地の有する雨水浸透・貯留・流出抑制機能を最大限活用するための定量的・統合的な緑地管理システムを構築する。具体的には、先端的技術や機械による管理コストの削減や、より雨水浸透・貯留・流出抑制機能の費用対効果の高い緑地管理手法の導入、氾濫危険度が高く優先的緑地保全が必要な地域の同定等を統合評価する緑地管理システムを構築する。以上の緑地管理システムで得られた結果について、名古屋・福岡都市圏の対象流域において実際の政策へ反映されるように、関連主体や自治体に対し、シンポジウムの開催等を通じて成果発信・意見交換を行い、積極的に働きかける。また、本研究成果は英文書籍として取りまとめて出版し、流域レジリエンスに向けた緑地保全システムのモデルケースとして、国際的に広く発信し、さらなる議論を展開していく。
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