研究課題/領域番号 |
20H02333
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高口 洋人 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90318775)
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研究分担者 |
吉村 靖孝 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (00712035)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 仮設住宅 / 備蓄 / ゼロエネルギー / エージェントシミュレーション |
研究実績の概要 |
昨年度ZEH型への改修計画を作成したWEEBの改修工事を実施した。仮設住宅として生活できる一通りの設備を備え、エネルギー的にも自立できる仕様としている。改修工事はCOVID-19の流行による工事遅延、工事費高騰により一部工事を2022年度に繰り越した。 WEEBは恒設転用可能なエネルギー自立型の仮設住宅の備蓄を目差すものであるが、既に平常時はホテルとして利用し、災害時は完成形のユニットとして被災地に輸送し、仮設住宅として利用する形態のものが実用化されていた。WEEB同様、仮設住宅提供までのリードタイムを大幅に短縮できる可能性がある取り組みであることから、導入自治体、提供団体へのヒヤリングを実施した。事例は西日本豪雨時に被災した岡山県倉敷市と、令和2年7月豪雨時に被災した熊本県、熊本県球磨村で、それぞれ自治体担当者へのヒヤリングを実施した。 西日本豪雨と令和2年7月豪雨で供給された備蓄型の仮設住宅は、各災害で供給された仮設住宅の1割を占め、一定の役割を果たしつつあることが分かった。しかし、先例がなかったことから、内閣府や被災自治体との協議に時間を要し、仮設住宅入居までの時間短縮というう目的は実現できていない。先例が少ないということによる自治体の抵抗感を解消し、リードタイムを短縮するための導入手続きの簡略化今後の課題といえる。 また、地元建設業者は備蓄型の仮設住宅の導入に反対する傾向があることも分かった。仮設住宅需要は一定の経済効果を地元にもたらすことから既得権益化している。自治体としても配慮せざるを得ない場合もあり、反対の解消方法を用意する必要がある。 これらはWEEBに対しても同様に発生する恐れのある摩擦であり、2022年度に行う社会システムの検討の条件に組み入れる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
WEEBの改修は、担当作業員でCOVID-19の感染が発生し、遅れることとなった。また自治体へのヒヤリングについても、対面でのヒヤリングはNGとなり、オンラインと電話でのヒヤリングとなった。これも調整に時間がかかり遅延の原因となった。また、海外への展開を踏まえ、日本同様自然災害の被害が大きいインドネシアやフィリピンの仮設住宅や自治体関係者へのヒヤリングを予定していたが、資料収集のレベルに留まっている。 また、世界的な木材、建設資材の高騰、サプライチェーンの混乱により、資材調達の遅れ、代替製品への見直し、見積もりの見直しを行ったが、このことも遅延の原因となった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度については、遅れたWEEB改修工事の完成、また実際に運搬・設置することにより可搬性や設置方法について検証、見直しを行う。この可搬性の検証については、デモンストレーションの意味合いも込めて公開で行う予定である。 備蓄型の仮設住宅の備蓄方法は、エージェントシミュレーションを活用し、被災リスクの地理的分布に基づく備蓄計画の立案手法を確立する。また、2021の調査で明らかになった、地元建設業者の反対や、自治体の受け入れ態勢の円滑化について、協議ガイドラインや説明資料など、必要なコミュニケーションツールの検討を行う。
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