研究課題
コロナ禍も概ね落ち着いたものの、中国大陸へ実際に移動し、現地調査を行うことを一つの方法と設定した本申請課題にとって、いまだ渡航をめぐる多くのリスクを否定できない状況があった。ビザなどの取得にかかる膨大な取引コストも考慮して、かつ研究メンバーの安全を確保するため、熟慮のうえハイリスクとなる中国への渡航計画を補正し、日本国内における中世建築情報の東アジア海域をめぐる伝達と変容に関わる事績に焦点を当て、歴史的建造物や画像史料、文献資料の調査へとシフトすることにした。国内の建造物の調査先として、本年度は山梨、東京、茨城、奈良、京都に現存する指定文化財の意匠・技法調査を進め、以前から継続して行っていた調査結果と照らし合わせながら、同時代の建造物の特徴について悉皆的に情報を得ることが可能となった。多くの折衷様建築と呼ばれる建造物において、本申請研究で問題とする禅文化の影響関係が見られたとともに、その背景についても文献資料で補完しながら、いくつかの可能性が見えるようになってきた。同時に、建築にみる外来様式とは対極に、いわゆる「和様」建築の変遷についても地域別に理解が可能となった。併せて、画像資料の調査にも進捗があった。南宋五山の建築情報が多分に描かれた『五山十刹図』を対象に、熟覧と撮影を通した詳細な検討を行った。描かれた建築や什器のかたちとともに、各々の伽藍間にみる特徴の差異についての理解を進めることができた。以上の成果を現在論文および書籍として執筆中で、2024-25年度中にいくつか世に問う予定である。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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日本建築学会東海支部研究報告集
巻: 62 ページ: 481-484
増田友也の建築世界 = Tomoya Masuda's architectural world
巻: - ページ: 150-153
建築思想図鑑
巻: - ページ: 90-93