研究課題/領域番号 |
20H02341
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中谷 礼仁 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30267413)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高地集落 / 流域文化 / 交通経済 / 地域経営 / 東アジア / フィールドワーク |
研究実績の概要 |
COVID-19発生のため当初のネパール・トクチェ現地調査が不可能な状態が続いている。現地報告では現地住民における恐怖感も発生している。そのためインド・ ヒマラヤ・中国高地民族の集落立地・生業研究との比較のために、日本国内での高地に位置する伝統的集落を同様の視点で行うこととした。 具体的には、1高地集落がいかなる生活・建築様式を築いたか(環境適合性/非適合性)、2成員がいかなる経済活動と生活圏を構築したか( 交通・経済・生業)、3集落外に居住する成員にとって出自集落はどのような意味を持つか(集落存在の根拠)という三要素の連関性の分析に ついて現地調査、聞き取り、並びに文献調査によって行うこととした。結果以下のような調査活動を行なった。 1. 調査方法の検討 下記の長期調査を実行し、協力学生また研究協力者である地質学者、社会学者、民俗学者との現地調査のための調査方法を確立した。結果として対象地域ついて以下の項目をまとめることとした。1-1. 文献研究:先行研究,人口推移,地形・地質,気候,交通史,災害史,産業・生業史,宗教・風俗,既存の民家調査 1-2. 現地調査:ヒアリング,建物立地,現状の生活・生業確認 1-3. 分析調査:標高断面とパノラマによる地域特性把握図の作成 1-4. その他特筆すべき点 2. 長期調査の実行 最終的に2箇所について上記調査を行なった。秋田県阿仁川流域と徳島県那賀川流域である。前者はマタギ等の猟文化が継続していること,さらに鉱山開発等の高地特有の地域経営が営まれていた。特にマタギは各村で完結して行われており,その様式も複数存在していた。後者では急進な地形に沿った集落の現存状況をまず確認し,中世から近世にかけての河川交通の趾について確認した。 3. それらを調査報告書としてまとめ,関係機関に送付した。次年度との総合によって査読論文を執筆予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象年度はネパールの高地で行うべき調査での方法を比較的に国内で検討するための方法論構築とそれに基づく実地研究が求められた。 前者については,協力参加者との打ち合わせにより概ね総合的と言える調査項目と実行方法が確立されたことは,本研究の進展を物語っている。 後者については,対象年度は2箇所の実地調査にとどまった。それにより概ね順調に進展していると判断した。とはいえ,実地調査において獲得された調査方法は,方法論構築へとフィードバックされたので,次年度の継続研究に資するところが大きかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,対象年度において培われた方法論と実地調査方法を継続する。その中で,訪問地を水系を利用した生業の違いによって以下の四つを訪問の選定候補としている。 1.食・塩(サメ(ワニ)食文化・江の川・広島県) 2.木材(紀の川・和歌山県) 3.石材(円山川・兵庫県) 4.鉱物(斐伊川・島根,鳥取県) それぞれについて,年度末までに報告書を執筆予定である。
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