研究課題/領域番号 |
20H02345
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水口 周 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70512359)
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研究分担者 |
北本 和也 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (80869834)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 複合材料 / 複雑形状部材 / 成形モニタリング / 光ファイバセンサ / 変形メカニズム |
研究実績の概要 |
複合材複雑形状構造の基本要素であるコーナ部は、厚みを均一に製造することが困難であることが知られている。これは、コーナ部で屈曲する繊維が剛であるために金型に沿った形状になりにくいこと、また加圧時に内部に不均一圧力場が生じることで、樹脂固化前に複雑な流動現象が生じるためと考えられている。今年度は、このコーナ部に光ファイバ形状センサを適用することで、未だに未解明である樹脂固化前変形メカニズムを明らかにすることを試みた。まず、標準的な凸型の金型を用いた評価を行った。オートクレーブ加圧により圧密化が進みコーナ部が金型形状に沿った変形をしたのちに、圧力勾配に従って樹脂流動が起きることで形状が崩れていく挙動を初めて捉えることに成功した。また、自動積層時に発生しうる積層圧力変動が成形時の変形に与える影響も併せて評価した。積層時の圧力が低下することで層間に空隙が生じると、オートクレーブ加圧によりしわが形成されるが、温度上昇とともに樹脂粘度が低下するにともない層間すべりが促進され、一度発生したしわが若干修復されるという興味深い挙動が観測された。総じて、オートクレーブ加圧により発生した変形が樹脂流動によって緩和するという一般性のある現象が生じており、樹脂固化前の流動挙動を制御することによって、成形時の形状の崩れを抑制できる可能性が示唆された。これに続き、凸型と凹型の金型での変形メカニズムの違いについても検証し、凸型ではコーナ部から樹脂が流出することで板厚が減少するのに対し、凹型の金型では繊維のブリッジングによりコーナ部に樹脂が流入することで板厚が増加する挙動を捉えることに成功し、コーナ部の成形時変形メカニズムの統一的な理解に至ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自構築した埋め込み可能な光ファイバ形状センサを用いて、未解明であった複合材成形時の変形挙動を明らかにすることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
樹脂固化前の流動挙動を制御することによって、成形時の形状の崩れを抑制できる可能性が示唆されており、これに取り組む。
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