令和4年度は主として令和3年度にまでに取り組んだ,1.放電プラズマを利用した航空機表面での高速気流制御特性の調査と,2.数値解析による気流制御特性の予測モデル構築をもとに,3.風洞実験用極超音速機模型に放電気流制御デバイスを実装し極超音速風洞実験にて制御応答時間と空力制御特性への影響解明に取り組んだ. 将来型宇宙往還機や極超音速旅客機における高速空力制御手法においては,飛行中の電力が制限されることを念頭に,放電プラズマによる空力制御効果の調査と,同時に,省エネルギーで同等の制御効果を得ることを目指したパルス放電による気流制御効果を調査した.極超音速機を模擬した半頂角20度の二重円錐形状の機首を持つ模型を製作し,放電による気流制御効果を風洞実験により定量的に計測した.実験は東京大学柏極超音速高エンタルピー風洞において実施し,マッハ数7.0,よどみ点圧力950kPa,よどみ点温度約600Kの気流中で放電プラズマを定常的,及び,デューティー比50%のパルス状に生成し,これによる放電部下流域での圧力変動を空力制御能力の指標として詳細に計測・検討を行った.実験ではプラズマ下流側での高速圧力計測に加えてシュリーレン法等による流れ場の可視化を実施した.放電プラズマを用いることで,航空機表面での圧力をプラズマ電力に応じて2割前後変動させることができると判明した.また,機体模型表面での気流速度代表値÷代表長さから求まる気流制御装置スケールの特性周波数よりも高速にパルス放電を行うことで,定常放電時と同等の制御効果を得つつ投入電力を削減できることが示唆された.また,これらの実験結果に対応する数値解析を実施し,圧力変動の詳細について実験との比較検討を行った.プラズマにより放電領域周辺から下流にかけて表面圧力の制御が可能であり将来的に航空機空力制御へと十分に応用可能であると判明した.
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