研究課題/領域番号 |
20H02350
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杵淵 紀世志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90648502)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超音速流れ / 衝撃波 / 境界層 / 剥離 / プラズマ / パルス放電 |
研究実績の概要 |
近年、超音速旅客機やスペースプレーンの研究開発が活発化している。衝撃波発生に伴う機体への過大な造波抵抗、スクラムジェット等超音速空気吸込みエンジンの技術難度の高さが実現への壁となっている。機体周囲やエンジン空気吸込み口に生じる境界層の剥離は、機体への空気抵抗・熱負荷の増加、エンジン不始動を招く。剥離抑制はこれらの実現に向けたブレークスルーとなる。 そこで本研究では、ナノ秒パルス放電プラズマアクチュエータ(以下単に「ナノ秒放電」と呼ぶ)により、超音速流中の境界層の剥離抑制に取り組む。ナノ秒放電を特徴づける指標として、放電後の渦生成を介し超音速の主流から低速の境界層への運動量輸送による剥離抑制に加え、放電に伴う流れの過熱により剥離が進行してしまうという負の側面がある。この2つの現象に焦点を当て研究を進める。 今年度は、昨年度製作した超音速風洞についてその特性を把握するとともに、斜め衝撃波・境界層干渉による剥離を生成し、ナノ秒放電の境界層、剥離への影響について調査を進めた。また平行光レーザーBOS法によるナノ秒放電による高温・低密度場の定量観察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平行光レーザーBOS法によるナノ秒放電による放電場の温度上昇に伴う密度低下量を定量的に計測した。放電エネルギーの増大に伴い渦のサイズ、密度低下量ともに大きくなるが、あるエネルギーでサイズは飽和し、主に密度低下にエネルギーが費やされることが明らかとなった。境界層剥離の抑制には、渦のサイズと境界層厚さの関係の把握が必要であり、重要な知見が得られた。 昨年度作成した超音速風洞に関し、その特性をピトー管等により把握した。更に斜め衝撃波生成のためのくさびを製作し、剥離の模擬を試行した。当初風洞不始動等の問題が生じたものの、最終的に斜め衝撃波・境界層干渉により、境界層の剥離が模擬できることを確認した。 超音速風洞中でナノ秒放電を作動させ、その境界層、剥離への影響を調査したが、当初期待した影響を観察することはできなかった。実験結果に基づく分析により、剥離のエネルギーが当初予測より大きく、ナノ秒放電により優位な影響を及ぼすことができなかったと考察した。
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今後の研究の推進方策 |
剥離域の特性を調査・調整し、ナノ秒放電に伴う境界層への影響と衝撃波・境界層干渉による剥離への効果の調査を継続する。
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