今年度は、これまでにその基本的性能を確認した噴霧LES解析コードに対して、スワーラ近傍のみならず燃焼器のスケールでの解析を実施した。この際、初期条件として燃焼器全体に予め旋回をかけた。このために、静止気体中での計算開始を行った際に比べて相対的に局所のせん断が若干減じるがその影響を見た。 これまで、東北大学・IHIのスワール流れの実験に対しての噴霧生成の検証を行っていたが、スワーラ近傍の流れ場はよく合っていた。ただし、スワーラ近傍からより下流側へ移ったとき、流れの発達が遅いため少なくとも計算できた時間の範囲では実験での結果とは必ずしも一致しない結果となっていた。そのため、より短時間での発達を促すために初期条件として燃焼器全体の旋回を入れた。 その結果、微粒化本体の特性には大きな差がないこと、後流部の旋回は想定通りの発達になることが確認された。また、前年度までの結果と総合すると、微粒化はやはり気液界面でのせん断強度によって生成される液滴の径の決定によって支配されており、実用燃焼器での強乱流の条件では、現在想定している乱流微粒化モデルの正当性が改めて確認された。このことは、層流旋回火炎における伸長は層流の特性であって乱流ではRayleigh-Taylorモードによって微粒化が起こるため現状のモデルで旋回火炎に使用できることが確認された。 また、付帯する機能として、より高圧での作動条件に対応させるため遷臨界での微粒化モデルを組み込んだLESを構築し、遷臨界部での疑似沸騰も取り込むコードに発展させた。これにより、乱流微粒化モデルを航空用の燃焼器解析コードに組み込み、企業での一般のエンジン開発時に実装できるコード構築を実現した。
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