研究課題
2020年度中に製造する計画であった膨張波管出口膨張ダクト計測装置の開発,並びに当該装置を用いて実施する計画であった膨張波管実験が,2020年度のコロナウイルスの流行により2021年度へ繰り越しとなったため,年度当初にこれらを実施した.熱平衡計算と CFD による非平衡計算を行うことで,膨張ダクト中で観測可能な CO2 の再結合によるモル分率変化と振動・回転温度低下を同時に最適な状態で,CO2 赤外スペクトルの顕著な変化が観測可能なノズルの広がり角を,衝撃波速度に対して最適となるよう設定する作業である.解析の結果,半頂角 10°のダイバージェント角が最も期待できるとの結論に達し,これを踏まえて膨張ダクトを設計し,軸方向に 3 箇所の観測部を有する膨張ダクトを製造した.次に,赤外放射のうち,特に CO2 に由来する放射についてナローバンドパスフィルタにて 4μm 前後の領域をフィルターし,CO2 からの赤外放射の変化を計測する実験に着手した.FY2021 の作業としては,観測系のセットアップを完了し,予備的観測を行うに留まったが,現在,これらの予備実験により得られたデータを精査して,本試験の試験パラメータの選定,光学系および同期手法の改善,およびセンサの絶対強度補正に係る検討を進めている.平衡して,軽ガス銃へ設置する極短時間分光法システム,およびマルチポイント分光システムの開発を進めた.事前検討によって選定済みの, 液体質素冷却型遠赤外線ICCDを検出器とし, 遠赤外分光器と組み合わせた観測システムのセットアップを行い,テスト運用を行った.FY2021 中に,軽ガス銃によって安定的に火星大気突入等価環境(速度 4.2 km/s)で模型を射出することが可能となったことから,模型周りの狙った位置の観測が可能となるように,ピックアップと同期の手法について改善を進めた.
3: やや遅れている
2020年度のコロナウイルスの流行により今年度に先送りした研究内容については,2021 年度の計画修正によってキャッチアップし,おおむね完了している.一方,研究分担者の一人が 2021年11月から予期せぬ異動となり,本研究への寄与がほぼゼロとなってしまったため,第四四半期の計画は実現できなかった.2022 年度以降は,研究協力者を増加することで計画の実施を試みているため,大きな遅延を発生することはないと考えているが,リスクとして識別しておき,遅延発生の兆候が見られた場合は対策をとる予定である.
残作業として,軽ガス銃へ設置する極短時間赤外分光法およびマルチポイント分光法の開発を完了させる.既存の可視分光装置を用いた実験システム・観測システム間の調整と機能検証をまず完了し,同等の機能を有する赤外分光システムを設置して, 可視分光装置への置き換えを行う.液体質素冷却型遠赤外線ICCDを検出器とし, 遠赤外分光器と組み合わせた観測システムを設置し,運用を開始する.また,2021年度までに完了した, 改善された複雑系流体解析および輻射解析モデルを合わせて用いて, 選定された複数のフライト等価環境において実験を行い, 模型周りの高温ガスから放射される赤外線輻射を分光学的に観測することによって, 火星フライト環境で大気突入機に作用する輻射加熱率を定量化する.また, 上記の解析モデルを用い, 試験条件において自由飛行模型周りの流体・輻射解析を行い, 数値解析により得られる輻射強度の空間分布と実験結果を比較することによって解析モデルの検証を行い, 誤差があれば解析モデルを改善し, これを反復的に実施することによって, 最終的にフライト等価環境によって検証された高精度で信頼性の高い輻射加熱予測手法を獲得し, その成果を報告する計画である.当初期待していた研究分担者のエフォートを期待できないこととなったが,新たに 2 名の研究協力者を加えて体制の充実を図っており,計画通り推進できると考えている.
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