研究課題/領域番号 |
20H02362
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 勝紀 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (70633494)
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研究分担者 |
巻 俊宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (50505451)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ソナーシステム / 堆積物 / 埋没物 / AUV / 底生生物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、先行研究で開発を進めてきた堆積層内精密探査用ソーナーシステムを実海域に展開し、得られるデータを社会において利活用するための課題を洗い出し、またそれら課題を解決するためにシステムを高度化・最適化することである。特に、微小な対象物や観測環境に合わせた音波の送信方式、ソーナーシステムを搭載するプラットフォームの選定、運用方法、データ解析手法については知見が乏しく、実際の観測現場に合わせた対応が必要になることが予見され、本研究において初めて明らかになる部分が殆どである。以上をふまえて、「実海域において海底下の微小埋没物をソーナーシステムによって確実に検知するためにはどのような技術課題が生じるか?またその課題を解決するためにはどのような策を講じることができるのか?」が本研究の核心をなす問いである。その問いに対し、2021年度は以下の研究を実施した。 (1)実海域においてクローラ計測によるシステムの精度検証(水野・巻) 2020年度に計画を前倒して開発したクローラを用いた精度検証を実施した。二枚貝であるアサリの減少が水産上の大きな課題とされている静岡県の浜名湖において、4つの実験区を設定し、音響クローラを用いた試験を行った。音響試験後は、実際に貝のサンプリングを実施し、その性能を評価した。結果として、音響データから底泥中の貝の多少を評価できる可能性が示されたものの、二枚貝や巻貝などからの信号が混在しており、その分類手法を開発することが必要であると考えられた。 (2)深海域において自動計測フレームを用いた底生生物計測の実施(水野) 研究計画が良く進捗していることにより、将来目標の一つであった深海域における底生生物の調査試験(実海域試験)を実施した。深海の生物コロニー周辺において、音響計測を実施し、深海の底生生物を3次元的にin situで可視化することに世界で初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に示すように、新しいシステムの開発および実海域における試験を実施するなど研究計画に対して概ね順調に進んでいる。 (1)実海域において新しく開発したシステムの駆動試験 新しく開発したシステムの動作は順調であり、前年度に初めて実海域(神奈川県海の公園)にて実施したクローラを用いた試験で課題となったモーターの出力不足や発熱なども順調に改善された。ハードウエア的には、当初計画していたシステムが完成された形となった。また、性能を評価するための試験を静岡県の浜名湖で実施した。信号分類の点で、新たな課題が生じたため、ソフトウエア(信号処理など)を中心に、今後、その課題を解決するための取り組みを進める。 (2)深海域において自動計測フレームを用いた底生生物計測の実施(水野) 大深度有人潜水艇に、開発した音響計測システムを搭載し、深海1300 m付近において底生生物の音響計測を初めて実施した。計測中に一部ハードウエアにトラブルが生じたものの、2回の潜航で6地点のデータを取得することができ、想定以上の成果が得られたと考えている。計測時に、システムを設置するために時間を要していることやセンサの高さを任意に決定できないなど、運用上の課題が見つかったため、次年度における改善点として捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究で開発した堆積層内精密探査用ソーナーシステムの実海域試験を進める。 (1)実海域においてクローラ計測によるシステムの精度向上(水野・巻) 静岡県の浜名湖において、貝類や石などの埋没物からの反射信号を分類するための新しい手法を開発する。そのために、アサリや巻貝を用いた実験を計画している。得られるデータに対して、深層学習などを応用して、信号分類することを試みる。 (2)深海域において改良した自動計測フレームを用いた底生生物計測データの蓄積(水野) 2021年度に引き続き、深海における音響計測を予定している。運用上の課題を解決するために、本計測システム専用のバケットを新規に開発し、大深度有人潜水艇によって効率的にデータを蓄積できる仕組みを開発する。またセンサ高さを調節できるように、Z軸にも電子的に制御可能なモータを開発する。これらの新しい取り組みにより、深海の底生生物の音響計測データを蓄積する。
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