研究課題/領域番号 |
20H02368
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
勝井 辰博 神戸大学, 海洋底探査センター, 教授 (80343416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 塗膜粗面 / 回転円筒 / LDV / 粗度関数 / 実船性能 / 摩擦抵抗算定法 |
研究実績の概要 |
これまでに作成した回転二重円筒装置にLVD流速計測システムを導入し、円筒型水槽内で回転する円筒表面近傍の流場計測が可能なシステムの開発に成功した。このシステムによる回転円筒の表面に塗布した塗膜の粗度関数の直接計測法について検討を行った。まず、粗度関数の計測を行うためには壁面のごく近傍(対数速度分布が成立している領域)での乱流境界層内速度文分布の計測および壁面の摩擦応力を推定する必要がある。摩擦応力の直接計測は困難であることから、回転円筒の回転トルクの計測値から推定する方法について考案した。この手法の概要は以下の通りである。まず、滑面円筒の対数領域速度分布から摩擦速度を逆算し、これを摩擦応力に換算する。次に塗膜粗面円筒の回転トルクと同回転数の時の滑面円筒の回転トルクの差を求めこれが、すべて摩擦応力の差によって生じるとの仮定の下、塗膜粗面の摩擦応力の増分を求め、滑面の摩擦応力に加えることで塗膜粗面の摩擦応力とし、これから摩擦速度を求める。この摩擦速度と塗膜粗面の速度分布の計測結果から塗膜粗面の対数速度分布を求め、滑面の対数速度分布との差から摩擦速度を求める。この手法に基づき、塗膜粗面の粗度関数を求めたところ、実船の粗度レイノルズ数近傍では、よく知られた砂粗面の粗度関数とは異なり、上に凸の形状となることが分かった。この粗度関数を用いて、実船の粗度抵抗の算定を行ったところ、概ねITTCの推定式に近い傾向が得られることが分かった。しかし、計測した塗膜粗面の種類が限られていること、また低粗度レイノルズ数域での計測ができていないことから、さらに計測条件を増やす必要がある。また、精度検証についてさらに詳細に実施するとともに、回転円筒流れと平板流れの違いについても考察を行う必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究遂行に必要な実験設備の構築ならびに計測が問題なく実施できることが確認されており、これまでの遅れを取り戻したと考えている。また、計測例はまだ少ないが実船粗度レイノルズ数域での塗膜粗面の粗度関数の計測にも成功しており、今後計測条件を大幅に増やし、実船の摩擦抵抗推定法の構築を行っていくことで、十分目標の成果を達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で回転二重円筒装置を用いた塗膜粗面の粗度関数の直接計測手法を確立するとともに実際に粗度関数の計測に成功した。今後は様々な塗膜を対象に粗度関数の直接計測を行って、塗膜粗面の幾何形状と粗度関数の関係を明らかにしていくことを目指す。具体的な塗膜粗面の幾何形状パラメターとしては、粗度平均高さおよび輪郭曲線要素長さを用いることを検討しているが、それだけにこだわらず様々な粗度パラメタと粗度関数の関係についても調査を行う予定である。また、これまでの計測では実船粗度レイノルズ数域の計測を中心に行ってきたが、模型船試験との比較を行うを行うために低粗度レイノルズ数域での計測も実施予定である。さらに、回転円筒流れと平板流れにおける対数速度分布の違いについても検討し、回転円筒流れの対数速度分布のパラメタを利用することも検討する。計測精度についても配慮が必要であると考えており、特に回転円筒の回転トルクの計測精度についての見直しについても検討を行う予定である。
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