研究課題/領域番号 |
20H02369
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
陸田 秀実 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (80273126)
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研究分担者 |
田中 義和 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (00335704)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 粒子法 / 海洋巨大波 / 浮体構造物 |
研究実績の概要 |
これまでの研究実績の概要は以下の通りである. (ST1) 多方向交差角を有する不規則波群における海洋巨大波の造波理論:実海域を想定した多方向不規則波群による海洋巨大波の発生は,オックスフォード大学の研究 (JFM, 2019) が世界初である.本研究では,この波動理論に基づいて,FloWave水槽(エジンバラ大学所有)を用いて,168枚の造波板をリアルタイム制御が可能な造波信号シミュレーションモデルを作成した.これにより,多方向交差角を有する波群同士の波峯間干渉によって出現する主波と横断波の方向スペクトルの重ね合わせを行い,任意の海象条件下の海洋巨大波を発生・砕波させる数値シミュレーション水槽を構築した. 次いで,(ST2)海洋巨大波を対象とした高解像・高精度なコンピューティング・ビジュアライゼーション(SPH-GPU)技術の開発:理論的および実験的アプローチによって,時空間的に高分解能な4次元力学諸量(流速,波高,流体力など)を取得することは困難である.そこで,①大規模・高解像・高精度なコンピューティング・ビジュアライゼーション (SPH-GPU粒子法) 技術の開発を行った.SPH-GPU粒子法は,最先端の粒子法シミュレーションと高速GPUグラフィック演算を併用したCFDコードであり,海洋巨大波の物理場の時空間的変化の3D可視化が可能となった. さらに,浮体構造物の理論計算法との比較検証を行い,浮体構造物に作用する平均波力, 最大波力が概ね再現可能であることが分かった.加えて,浮体の6自由度運動および係留索モデルが完成し,それらの軌跡を追跡することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,海洋巨大波の予測と回避のために設計支援ツールの開発を行い.これまでの研究に基づいて,任意の海象条件下で出現する海洋巨大波と海洋構造物(浮体式海洋構造物,大型船舶,海上プラットフォームなど)による構造流体連成に関する数値実験を行い,浮体の6自由運動計測,衝撃荷重を計測した.また,浮体構造物に関する理論設計値と,SPH-GPU粒子法による計算結果を精度検証した.さらに,SPH-GPU粒子法を用いて,各種サバティカル条件下で発生する海洋巨大波の予測シミュレーションをパラメータスタディし,その回避条件を数値実験的に明らかにした.さらに,先に示した構造設計指針に基づいて海洋巨大波の予測・回避を可能とする設計支援ツールの指針を得た.現在,砕波を考慮した理論計算法の問題点を精査している途中である.特に,非定常な砕波衝撃圧が作用する場合の浮体運動および係留力の妥当性について検証を進めており,その設計支援ツール(設計法)の改良に取り組む段階まで来ており,その完成度を高める予定をしている.なお,影響により,英国FloWave水槽を利用した海洋巨大波の実証試験が実施できていない.そのため,別水槽による実験計画を予定している.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに,サブテーマST1(多方向交差角を有する不規則波群における海洋巨大波の造波理論)およびサブテーマST2(海洋巨大波を対象と した高解像・高精度なコンピューティング・ビジュアライゼーション(SPH-GPU)技術)は,予定通り,ほぼ完遂している.本年度は,以下のサブテーマについて,実施する.サブテーマST3:海洋巨大波の発生/内部流速/衝撃荷重の実態解明と精度検証:前年度のサブテーマ1,2の研究成果に基づいて,FloWave水槽内に様々な海象条件下の海洋巨大波を発生させ,海洋巨大波の水面変動・流速計測,3Dビデオカメラによる立体視,CAT技術による内部流速・圧力の同時計測を試みる.また,同一条件下における海洋巨大波をSPH-GPU粒子法を用いてコンピューターシミュレーションし,その精度検証を行うとともに,4次元力学諸量の高速ビジュアライゼーションを行い,砕波を伴う海洋巨大波の実態解明とその成因を分析する.サブテーマST4:海洋巨大波の予測と回避のために設計支援ツールの開発:サブテーマ3の成果に基づいて,任意の海象条件下で出現する海洋巨大波と海洋構造物(浮体式海洋構造物,大型船舶,海上プラットフォームなど)による構造流体連成に関する実験を行う,浮体の6自由運動計測,衝撃荷重を計測する.得られた実験結果とSPH-GPU粒子法による計算結果を精度検証するとともに,各種海洋構造物の設計指針を新たに提案する.また,SPH-GPU粒子法を用いて,各種サバティカル条件下で発生する海洋巨大波の予測シミュレーションをパラメータスタディし,その回避条件を数値実験的に明らかにする.さらに,先に示した構造設計指針に基づいて海洋巨大波の予測・回避を可能とする設計支援ツールを開発する.
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