研究課題/領域番号 |
20H02370
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安川 宏紀 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (40363022)
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研究分担者 |
佐野 将昭 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (40582763)
平田 法隆 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (80181163)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 走錨 / 漂流 / 振れ回り / 圧流 |
研究実績の概要 |
1.水槽試験による風浪下における走錨の再現とそれに及ぼすパラメータの調査: 模型船ならびに錨模型を設計・製作し,それらを用いて,国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所(水技研)の角水槽において,風,波中における振れ回り走錨に関する試験,圧流走錨に関する試験を行った。試験では,風波の外乱条件等を種々変更して,それらパラメータが走錨に及ぼす影響を把握した。その結果,船が漂流を始めると,外乱条件に関わらずほぼ真横状態で漂流すること,これはその状態が船にとって運動学的に安定あることを明らかとした。なお,この知見は学術論文として取りまとめ,ジャーナルに提出した。(現在審査中)
2. 走錨計算モデル開発のための水槽試験の実施: 風波の中で投錨する船の運動を計算するいわゆる「走錨計算モデル」を開発するためには,船の流体力モデル,風波モデル,錨モデル等を完成させる必要がある。船の流体力モデルについては,MMGモデルを用いた。具体的には,プロペラ単独試験,抵抗・自航試験,プロペラ荷重度変更舵力試験,斜航・旋回運動試験,整流係数試験を,広島大学曳航水槽ならびに九州大学運動性能試験水槽にて実施した。これら水槽試験結果をベースに作成したモデルによる外乱下を漂流する船のシミュレーション計算は,1.で述べた水槽試験結果とおおよそ一致することを確認した。ただ計算精度に不十分な面があり,今後は改良を行う。
3.走錨の防止策の調査・検討: 文献調査を行い,走錨の防止策の調査・検討を行った。さらに,海上保安大学(広島県呉市)を訪ね,走錨の実態ならびにその防止策について,専門家からの意見を聴取した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に計画した次の3つの項目を予定通りに実施した。 1.水槽試験による風浪下における走錨の再現とそれに及ぼすパラメータの調査 2. 走錨計算モデル開発のための水槽試験の実施 3.走錨の防止策の調査・検討 特に問題となるようなことは発生していない。研究は,計画の通りにおおむね順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当初に予定した通りに研究を進める。具体的には次の通りである。 1.走錨計算モデルの開発,完成,検証:船の流体力モデルはMMGモデルを,風のモデルについては,藤原のモデルをベースとする。波モデルについては,波漂流力を考慮した低周波数運動でモデル(操縦運動)をベースに,高周波数成分である波浪動揺を取り扱うtwo-time scale methodを用いる。錨モデルについては,ランプドマス法を用いる。それらを組み合わせて,「走錨計算モデル」を完成させる。 2.走錨発生のメカニズム把握のための理論検討:走錨時のチェーン形状を簡略化したモデル化を用い,そのときに得られる運動方程式を線形化して,運動安定性の理論解析を行う。これにより,走錨発生の理由が力学的に解明でき,それに関わる種々のパラメータとの関連が明らかになると予想される。具体的な解析にあたっては,水槽試験で得られた船の流体力モデル等を使用する。 3.走錨防止法の水槽試験による検証:走錨の防止法として,推進器や舵を適宜操作して走錨を防止する方法を採用し,錨模型を備えた模型船を用いて,水産技術研究所の角水槽において,風,波中での水槽試験を実施する。船が風波に流された時には,積極的にプロペラを回転させ,必要があれば操舵をして,走錨を防止する。水槽試験を通じて,プロペラと舵の最適な操船方法を検討する。
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