本研究の目的は「疲労亀裂発生部である溶接止端部近傍に対するレーザ照射効果(溶接止端部に生成させた局部浸炭効果化による疲労亀裂発生の抑制,疲労亀裂が発生した場合に疲労亀裂が結晶粒微細化領域に突入すると結晶粒微細化に伴う高強度化の結果として疲労亀裂伝播速度が低下する効果,溶接止端部の局部溶融による溶接止端半径緩和の結果としての応力集中低減)を構造物の建造初期段階で付与することに加え,接合工程で大出力レーザを効率的に活用するレーザ・アークハイブリッド溶接(通常のアーク溶接継手よりも優れた疲労寿命を付与することが可能な溶接)を適用することで,長期間の供用においても十分な耐疲労性能を確保する大型溶接構造物の建造手法を構築することである.研究成果の概要は以下の項目(a)~(d)である. (a)昨年度までの実験よりもレーザ照射条件を変化させた照射実験を行ない,熱伝導理論式及びFE解析を活用することで,微細化層の生成位置の推定について精度改善を達成した. (b)浸炭による表層硬化に関して,再現性を有する効果的な施工条件を探索した. (c)すみ肉溶接継手の溶接止端部に,(i)結晶粒微細化処理のみ,(ii)浸炭処理のみ,を施した継手の疲労試験を行い,同時に実施した溶接まま継手との比較を行い,疲労寿命延命効果を比較した. (d)レーザ・アークハイブリッド溶接継手の製作に関して,実機製作導入現場からのヒアリング結果を考慮して,ギャップ幅ゼロでの継手施工を実験により検討し,良好なビード外観が得られる施工条件を導出した.
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