研究課題/領域番号 |
20H02378
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
大坪 和久 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (50435773)
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研究分担者 |
石田 圭 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (60636827)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルチリフト / 波浪中動揺 / 多目的作業船 / バージ船 / マルチボディダイナミクス |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は排水量の異なる2浮体(多目的作業船とバージ船)を使った同時クレーン作業(マルチリフトオペレーション)における多目的作業船の自動位置保持システムの最適設計法を確立することにある。 2年目にあたる今年度は、はじめに、昨年度に実施した多目的作業船とバージ船によるマルチリフトオペレーション時の波浪中動揺試験の結果を詳細に分析した。次に、そのマルチリフトオペレーション時の波浪中運動を高精度に推定するためのモデリング(運動方程式の導出)と数値計算のための定式化、プログラム開発を行った。数値計算プログラムによる計算結果を水槽試験の結果と比較検証作業を行い、その計算結果が実用レベルで十分な精度であることを明らかにした。 次に、数値計算プログラムを活用し、マルチリフトオペレーション時における2浮体の波浪中運動に与えるパラメータについて数値的に調査した。多目的作業船とバージ船との間の船間距離、吊荷重量等のパラメータを抽出し、その影響について感度解析を通じて調査した。調査の結果、船間距離は吊荷の運動の大きさのみならず、指向性(吊荷の運動方向)にも大きな影響を与えることを明らかした。 さいごに、研究最終年度において実施するマルチリフトオペレーション時の多目的作業船の自動位置保持試験のため、必要となる無線伝送システム装置の仕様検討を行うと共に、計測機材の手配、模型船の準備、試験計画書の作成、自動位置保持制御プログラムの設計及び開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初は2年目に多目的作業船とバージ船によるマルチリフトオペレーション時の波浪中動揺試験を実施する予定であったが、使用する水槽設備の都合から、初年度に前倒しして実施した。そのため、初年度に予定していた運動推定のためのモデリングや数値計算のための定式化、プログラムの開発は今年度に実施することになった。これらについては予定通りに実施することが出来た。2年目までに水槽試験及び数値計算の両面からマルチリフトオペレーション時の波浪中運動を詳細に調査することは、3年目に実施するマルチリフトオペレーション時の多目的作業船の自動位置保持性能評価試験、最適設計法の検討のためには不可欠なものであったため、研究遂行上、大変良かったと考える。 3年目に実施する、マルチリフトオペレーション時の多目的作業船の自動位置保持試験で使用するために製作する予定であった無線伝送システム装置が、コロナ禍の影響で、必要となる電子部品の手配等が遅れることから、今年度内での製作が困難ということが判明した。そのため、予算の繰越申請を行い、最終年度である3年目に製作を行うことにした。仕様に関する検討、製作業者との調整も計画通りに進んでおり、本試験には影響が出ないようにスケジュール計画を行っている。 また、昨年度に本研究の成果の一部をまとめて投稿した学術論文については、その研究成果が認められ、日本船舶海洋工学会論文賞(副賞 日本造船工業会賞)を受賞することが出来た。 以上の研究の進捗状況、論文賞受賞などの本研究に対する評価を総合的に考慮し、今年度は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に実施する予定であったマルチリフトオペレーション時の多目的作業船の自動位置保持試験で使用する無線伝送システム装置の製作がコロナ禍の影響で、最終年度である3年目に行うことになった。そのため、3年目の前半は、無線伝送システム装置の製作と当初予定していた試験準備等を併行して進める。 計画しているマルチリフトオペレーション時の多目的作業船の自動位置保持試験は、これまでに実施されたことがない水槽模型試験で、研究代表者及び分担者も経験がない試験であるため、十分な試験計画の検討と準備が不可欠である。研究分担者(石田)とスケジュール管理を適切に行いながら本試験に臨みたいと考えている。 得られた水槽試験データを詳細に分析し、マルチリフトオペレーション時の自動位置保持設計法に関する知見を取りまとめ、研究成果を外部機関において発表することを3年目の研究目標とする。
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