研究課題/領域番号 |
20H02389
|
研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
古田 壮宏 奈良教育大学, 教育連携講座, 教授 (60453825)
|
研究分担者 |
諸星 穂積 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10272387)
佐々木 美裕 南山大学, 理工学部, 教授 (20319297)
田中 健一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (90408724)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | オペレーションズ・リサーチ / 都市計画 / 公共施設・サービス / 数理最適化 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、将来の需要の変化を踏まえて、公共施設へのアクセシビリティという観点から、公平性を長期的に維持できる統廃合計画立案のための数理モデルを開発することを目的としている。これを実現するために、研究3年目である本年度は、昨年度までに行ってきた公共施設の統廃合に関する現状調査から、学校や病院、買い物支援サービスに焦点化し、いくつかの地域の情報に基づいて、施設配置を特に公平性の観点から比較・分析調査した。 また、公共交通サービスの一つである鉄道網(中京圏)を対象に、通勤・通学フローを利用して、立ち寄り需要を数多く捕捉する鉄道駅の特徴を分析した。さらに、途中通過する鉄道駅のどこかに施設が存在するようなフローの流量に着目し、流量を最大化し、指定の個数の施設を配置する問題を解いた。公共施設等の配置を検討する上での基礎資料として利用できると考えている。また、道路網状の固定施設に対する需要割当問題の定式化および数値実験を行った。 さらに、公共交通サービスとしての航空ネットワーク設計を考えるために、これまでに提案してきたどのように路線を整備していくかを取り扱うモデルにおいて、より現実的な状況を想定した拡張を行い、ベンチマークデータを用いた数値実験およびその結果の分析をすすめた。前年度までに開発したモデルを拡張し、従来のモデルにおけるすべての利用者が最小コスト経路で移動するという仮定に対して、利用者が最小コスト経路以外の経路も利用することを想定し、経路の利便性によって利用者を比例配分するモデルを構築した。 また、公平性指標の分析として、議席配分問題を対象として、ジニ係数を最小化する問題として定式化、過去の参議院および衆議院のデータを用いて、数値実験を行った。この数値実験では、議席配分問題を従来の2次ナップサック問題としての定式化と線形整数計画問題としての定式化と比較し、分析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、3年目として、公共施設・サービスに関する現状調査を継続し、中京圏の鉄道網を対象とした分析や施設配置問題に関する研究、道路網状の固定施設に対する需要割当問題、公平性の指標に関する研究を進めることができ、また、その一部は査読付論文誌等で発表することができた。全体として、概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までの実績に基づいて、最適な統廃合計画を求めるモデルの開発を続ける。開発しているモデルを用いることで、これまでに調査した実際の統廃合計画とどのような差異が生じるかなどについて、引き続き既存の公平性指標を援用した場合との比較などを通して詳細な分析をする。公共施設の長期的な需要の変化に対応するためのモデルの拡張を行いつつ、需要の変化に対する複数のシナリオに対応した統廃合計画のための数理モデルの開発を継続する。施設の統廃合を計画することは、利用可能な施設数が減少するということであり、これまでに開発してきている施設配置モデルを用いても、十分な公平性を担保できない可能性がある。このとき、その不利益を受ける住民に対して、自治体等はコミュニティバスなどの交通手段の提供を求められることが多い。そのような計画・整備が必要となることを前提とする場合、その代替交通網を整備することを含めて、全体として統廃合を計画できれば、よりよい公共サービスの提供につながると考えられる。そこで、本年度は代替交通網の設計と統廃合計画を同時に最適化する数理モデルを開発する。 これらの開発にあたっては、施設配置問題からのアプローチによる無線センサーのスケジューリングに関する研究や、1日の需要の変化が大きい救急呼び出しに対する救急システムのロバストな配置を求める研究で得られている知見を拡張・展開する。開発するモデル群はいずれも問題の複雑さ・規模という点から、実際の都市のデータにそのまま適用して解を求めることが困難であることが予想される。そのため、より解きやすいモデル化への工夫や、アルゴリズムの開発により、最適解を求める工夫を行う。併せて、問題の構造的特徴を活かして、近似解を求めるための発見的解法の開発を行う。これらを進めることで本研究課題をより実用的なものとする。
|