研究課題/領域番号 |
20H02392
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
志田 敬介 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40365028)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 技能伝承 / 暗黙的知識 / 作業習熟 / 脳活性 |
研究実績の概要 |
作業者の技能や習熟程度を評価する指標として、一般に、同一作業の繰り返しに伴い減少する作業時間が用いられる。しかし、実際の製造現場では、作業時間が十分に低減したのちも、作業ミスによって製品品質に影響を及ぼす問題が生じており、習熟程度を評価する方法として作業時間を用いるだけでは、十分であるとは言えない。実際に、実態調査を行うと、作業者の作業ミスなどによる品質問題を抱える企業は少なくない。 本年度は、昨年度から継続して実施している鏡映描写実験を用いて、作業ミスや作業者の訓練方法と脳活性に及ぼす影響について評価を行った。 作業成功時と失敗時の脳活性量について分析した結果、作業失敗時に脳が活性するグループと活性しないグループに分かれることが判明した。両グループの作業習熟について検討した結果、作業失敗時に脳が活性するグループの方が、作業訓練時の習熟効果は大きく、作業失敗時の認知が訓練効果に影響を及ぼすことが分かった。 そこで、このことを応用して、作業失敗時に脳が活性しなかったグループに対して、作業失敗時に声掛けを行った結果、前頭前野の活性が認められ、習熟促進の効果が確認された。 本結果より、習熟には作業失敗時に前頭前野が活性することが重要であり、前頭前野を活性させる方法として声掛けの効果が確かめられた。 また、作業者の作業動作の映像を解析し、要素作業の作業時間の評価や作業手順のバラツキなどを評価するシステムを開発し、このシステムを用いて大量の作業者データを自動収集し、作業者の習熟評価する運用を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技能の習得に伴う暗黙的な知識の習得に関して、訓練方法と脳活性の変化を評価することができたことが、本年度の大きな成果のひとつである。この結果を用いて、次年度以降、実務に携わる作業者の技能の解明に向け、更なる検討を行う予定である。 昨年度から開発している作業者の技能の変化や熟練作業者との差異を評価するシステムの仮運用ができた。これを用いて、来年度、本格的なデータ収集を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実務に携わる作業者の技能の解明に向け、作業訓練時の脳活性に関する知見をもとに、脳活性の観点から技能伝承について実際の作業を対象に検討を進める予定である。この検討では、新人作業者が作業に熟練する過程における脳活性の変化を継続的に測定している結果をまとめ、評価する予定である。また、本年度、実験室実験で明らかにした訓練時の声掛け等、作業者の訓練効果を促進するような施策についての検討についても実際の作業を対象時実施する予定であり、その効果を評価する予定である。 さらに、昨年度に着手した動画像解析を用いた作業動作の解析についても推進する予定である。この評価システムを用いることで、作業者の技能の変化や熟練作業者との差異を定量的に評価することが可能になると考えており、このデータを用いた評価についてもまとめる予定である。
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