作業者の技能や習熟程度を評価する指標としては、一般に、同一作業の繰り返しに伴い減少する作業時間が用いられることが多い。しかし、実際の製造現場では、作業時間が十分に低減したのちも、作業ミスによって製品品質に影響を及ぼす問題が生じており、習熟程度を評価する方法として作業時間を用いるだけでは、十分であるとは言えない。実際に、実態調査を行うと、作業者の作業ミスなどによる品質問題を抱える企業は少なくない。 本年度は、昨年度から継続して実施している作業者への声掛けの効果が、作業習熟へ及ぼす影響について検討をさらに進めた。具体的には、「スティック・ドラム技能」を取り上げ、作業者に作業ミスが生じた際に、それを知らせる声掛けのタイミングを変動要因とした実験を行った。 その結果、作業ミスが発生した直後に、そのミスを知らせる様な指導を行った場合、すなわち声掛けを即座に実施した場合において、作業習熟完了後における前頭前野の活性程度が低下し、安定することが認められた。つまり、習熟を質と言う観点で考察した場合、質の高い習熟が得られたと考えている。 本年度の研究結果より、作業習熟について考えると、作業ミス発生時に、即座にそれを知らせる指導を実施することが重要で、その様な指導方法を採用することで、習熟完了後において、作業者の前頭前野の活性は低く抑えられ、高い質の習熟状態に導く可能性があることが示唆できる結果が得られた。 また、作業者の作業動作の映像を解析し、要素作業の作業時間の評価や作業手順のバラツキなどを評価するシステムを使用して、実際の工場にて評価実験を行った。このシステムを利用することで、長時間の作業分析を自動化することが可能となり、作業者の習熟程度を正確に把握することが可能となった。
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