研究課題/領域番号 |
20H02393
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
鳥飼 宏之 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (50431432)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 爆風消火 / 微小爆薬 / 消火 / 地震火災 / 大規模林野火災 / ブラスト波 / 反射衝撃波 / 拡散火炎 |
研究実績の概要 |
反射衝撃波を伴うことで消火効果が変化する,空中起爆爆風消火に対するスケーリング則の解明を目的に消火実験を行った.スケーリング則を検討するために,爆発に投入するエネルギ量を変化させる必要があった.そこで,1個当たりの質量が10 mgそして放出エネルギ量が約18 Jのアジ化銀ペレットを,2個,3個と複数個を同時に起爆することで,爆発への投入エネルギ量を変化させた.そして,投入エネルギ量に対して爆風によって消火可能となる空間的な範囲を実験的に明らかにした.
実験結果として,次のことが明らかとなった.爆発への投入エネルギ量の増加に伴い爆風消火により消火可能となる火炎と爆点との水平距離は単調に増加した.また,その時の爆点高さは,投入エネルギ量の増加と共に増加し,地面から離れる傾向となった.水平距離の増加は,単純に爆発への投入エネルギ量を増やしたことによるブラスト波の強度の増大が影響していると考えられる.このブラスト波の強度の増大は,Richtmyer-Meshkov不安定性による渦対の形成と,それに伴って誘起される気流の速度をより大きくし,爆風による吹き飛ばしの効果を増大させることを意味する.他方,投入エネルギ量の増加に伴う,消火可能限界での爆点高さの増加は先行ブラスト波と反射衝撃波によって形成される衝撃波構造の影響によると考えられる. そして,消火可能となる火炎と爆点との最大水平距離を,ブラスト波のスケーリング則であるSachs’s scaling lawを用いて整理したところ,正しく整理できた.このことは,空中起爆爆風消火の水平方向の消火可能範囲に関するスケーリング則は,Sachs’s scaling lawを用いることができることを意味している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】で述べたように,空中起爆爆風消火に対するスケーリング則の検討を行った結果,消火可能となる火炎と爆点との最大水平距離を,ブラスト波のスケーリング則であるSachs’s scaling lawを用いて整理したところ,正しく整理できることがわかった.ただし,消火可能となる最大距離での爆点高さに対しては,Sachs’s scaling lawを用いても正しく整理することができなかった. このように,2021年度の期間で,空中起爆爆風消火のスケーリング則を完全には明らかにはできなかったが,一部のスケーリング則は解明できている. 以上の状況を踏まえると,本研究は現在までの進捗状況として,『(2)おおむね順調に進展している』と評価することができる.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,本研究の最終年度であるため,高速度カメラを用いたシュリーレン撮影を空中起爆爆風消火に適応して,詳細に消火機構を検討・解明する.また同時に,【現在までの進捗状況】で述べたように,爆点高さに関する適切なスケーリング則の解明を実験的に行う.
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